歴史上のプロパガンダに興味はありますか?
北の国の怪しいアイドルグループや、
中東のYouTubeでの発信、
はたまた日本のあの新興宗教やかつてのドイツの話も出てきてエグさもあり。
著者の辻田真佐憲氏が、古今東西を問わず斬り込んでいます。
あなたがもし、特に戦争や政変の歴史に興味をお持ちならオススメ出来る本。
「たのしいプロパガンダ」。
歴史に関する知的好奇心は満たしてくれます。
そう感じました。
加えて、広告やコピーライティング、更にはストーリーブランディングを学んでいるあなたでしたら最適かも知れません。
そんな視点も交えて展開します。
本当はこちらの本を読もうと思っていました。
プロパガンダ
広告・政治宣伝のからくりを見抜く
あやつられてはいけない!
とはまたスゴイ帯ですが。
この本はこのような記事をお読みのあなたならご存知かとは思いますが、広告関連のベストセラーでもある現代広告の心理技術101の中で紹介されています。
著者のエリック・ドルー・ホイットマン氏が読者に薦めたい書籍の1つとして挙げていて、それがキッカケとなり個人的に興味を持ったのが始まりです。
こちらでも記載しています。ご参考に。
※ちなみにこちらの書籍もドルー氏に薦められています。
ところで、今回の本書はこの本を探している最中に偶然出会い、値段も安かったので(笑)、先に購入したという訳です。
値段はかなり手頃。
私事ですが、
これまで洋の東西を問わず、アート方面からプロパガンダの歴史を数多く見てきました。
更には、勉強している広告やコピーの流れにも通ずるという事もあり手にするのには苦になりませんでした。
えい、買ってしまえ!と。
読み始めてみると、期待通りに様々な分野に応用出来そうなメリットを感じています。
そしてまた、タイトルにミソがあった。
Contents
「たのしいプロパガンダ」の「たのしい」の真意は。
「たのしい」という言葉に何をイメージしますか?
これからお話するその真意には、広告やコピー、そしてまたストーリーブランディングに通ずる知っておくべき本質や重要性があります。
真意は二通り。
第一は、
このタイトルだけを見ると、プロパガンダの面白おかしい側面を取り上げているように思うかもしれません。
確かに著者の辻田真佐憲氏も、
堅苦しくて退屈に思われがちなプロパガンダをエンターテイメントや笑いの視点から話を展開する事に努めています。
実際に面白さ・読みやすさは感じられるでしょう。
ここでは敢えて普段注目されない「楽しい」例をかき集めた。
なぜか。
それは、「楽しい」例にこそ、プロパガンダの本質があると考えたからだ。(p57)
その本質が気になる所です。
あなたも見た事があるかも知れません。
例えばこんな戦時中の風刺画やポスター。
政治に切り込んだ音楽(日本では浪曲)。
あるいは物語(同、落語・漫談)等。
ヨーロッパでは映画やアート。
今でも新聞の政治面では国内外を問わず風刺画が使われる事もありますね。
時代背景が違うといえど、それらを作り出すその意味は、
「たのしい」はあなたの生活に入り込みやすい。
特に戦争や政治というものを民に理解してもらうには、どんな時代も巷にあるエンターテイメントを駆使する事は世界の歴史でもよくありました。
映画やラジオやアート。
歴史をもっと紐解くと、戦争や政治にもてあそばれたアートの潮流すらも存在します。
私達の手に届く範囲の広告やコピーの世界に目を向けても、様々な手法によって生活に入り込む事が第一に考えられますね。
また、逆の見方によっては入り込む事よりも拒絶されない事を重視しているとも言えます。
どうしたら心に受け入れてもらえるのか?
戦争や政治の思想を。
先程挙げた戦争や政治というものは、国民の理解無くしては成り立たないものです。
アンタッチャブルな事も多いでしょう。
人の考えも様々でしょう。
そんな中、慎重に、巧妙に研究している事が本書から容易に想像出来るかと思われます。
想像を絶する大きな力を動かすために。
楽しいもので演出するという事は、理解への大きな第一歩という訳です。
これが第一の真意。
この真意がやがて裏の顔を見せていく事になると著者は暗に言っています。
それは、
「たのしい」は、実は「恐ろしい」。
強制的で退屈なプロパガンダを恐れる必要はない。
そんなものは反発を生むだけで、大した効果も期待できないからだ。
そうではなく、娯楽を通じて知らず知らずの内に浸透してくるプロパガンダこそ警戒すべき存在なのである。(p58)
第二の真意。
それはこのプロパガンダのからくりです。
楽しい顔をして(やや乱暴な言い方になりますけども)人の心や脳に入り込んで、刷り込んでいく。
そうでありながらも、裏の顔は一切見せない。
😈
この世の楽しいものこそ危険を孕んでいる事を思い知らされます。
ある種の中毒性や依存症?
コワイコワイ。
でもこれこそがまさにプロパガンダ。
個人的にこれまで広告やコピーライティングのトレーニングや勉強を続けて来ましたが、
本書のように、実際に壮大な史実から具体的なやり方や例を学べる事は収穫です。
評論書に近いので直接的なハウツーはありません。
ですが、ビジネスという範囲のものでなく、国家レベルというものから考える事が出来るのは決して無駄ではないと思います。
何故ならば、大きいターゲットを動かす事にはそれだけの理由や技術があると思うからです。
動かすという事は同一の方向を向かせる事。
その原理を知る事や真実に近付ける事には価値を感じさせます。
ストーリーブランディングの本質も同じ事に気付く。
理念を信じて受け取ってもらう事。
そうこう考えていくと、プロパガンダの本質はストーリーブランディングと同じですね。
両者とも手に取りやすいエンターテイメントやストーリーによっていつの間にか知ってもらう事。
ブランディングという視点で見ても効果はあるかなと思わされます。
大戦中にあらゆる国がこぞって国民の戦意を高揚させたのも、国民の利益の為のマーケティングでしょう。
そのストーリーブランディングについては、こちらの書籍もお気に入りのものです。
その言わんとしている事は深く考えると共通点がかなりあります。
ストーリー・ブランディング
自分たちは何のために存在するのか?
帯にも書いてありますように、売り込みや洗脳と感じさせない考え方が、数ある共通点の1つです。
加えてれっきとしたビジネスの話なので、エグイ事は書いてありません。
ブランディングのみならず、広告・コピーにも言及している事もあり、一冊で何度もオイシイ印象です。
話は戻って、
本書に出てくる大戦中のロシアやドイツが映画を使った手法や、昨今の中東でYouTubeを使って声明を出す事。
それらは本質を同じにして、いつの間にか人の心に訴えかけるものです。
また個人的には、同時代にアメリカのディズニーが戦争のプロパガンダ映画を作っているのには驚かされます。
あなたも知っているキャラクターを使っての映画です。
その他、宗教に関する事も出てきたりと、題材自体がブラックな部分も多いですが好奇心は満たしてくれます。
プロパガンダも広告戦略。
普段、私たちが「戦略」と使ってしまうからには闘い。
特に本書では一貫して、楽しい広告や活字が娯楽の顔を持ちながら、実はそれは集団教育の武器であり続けるのだなとの思いがしてきます。
教育という名の下に、教え、先導していくという事にはコンテンツマーケティングの匂いも。
恐らくはあなたも同じように思われるかもしれません。
これが良いのかどうかは使い方次第だと思います。
それか、既に歴史が証明している。
また、過去の大戦のもう一つの顔は、
宣伝戦という名の代理戦争。
広告を始め、こういったものは火や血の無い戦と言っても過言ではありません。
民の精神性を動かす、もう一つの冷戦。
単なるイメージアップの為にエンターテイメントを使うという次元ではない!
そのような訳で、
広告やコピーライティング、そしてストーリーブランディングの知られざる顔を知り、更に一歩先に行ってみようと思うのでしたら改めてオススメしたいですね。
私は元々、歴史や広告が好きなのも手伝い、かなりハマっています。
もっともっと深い所での戦略を知ってみたい気持ちが尽きません。
特に気になった所は。
ここでのお話は、やや不謹慎な表現かも知れません。
あの新興宗教や大戦時のドイツのやり方は、時代に先駆け、研究し尽された上で行われた高度なものだったのだなと感じています。
本当にビックリ!
YouTubeの無い時代に考え出された事が、やはりタダ者達ではなかった。
私自身は勿論肯定はしませんが、だからこそあのように大きく人を動かす結果にはなったのかと思わざるを得ません。
「たのしいプロパガンダ」
イースト新書Q
たのしいは恐ろしい。でも、時代を越えて病みつき。
最後に:
こうして、本書は歴史の本を読むような感覚に。
前半の毒も含んだ濃い史実から始まり、後半は若干サブカルチャーなどを題材にした軽い内容。
そこでテンションが少しだけ下がりますが、過去の戦略がいかに名実ともに理に叶ったものだったのかを知る対比になるのではないでしょうか。
如何にかつてのプロパガンダが巧妙で強力なものだったか。
またそこに至る経緯。
それらを知る事には、プロパガンダの強さをモノにして見抜けるヒントが詰まっています。
たのしいは恐ろしい。でも、時代を越えて病みつき。
「たのしいプロパガンダ」を見たい
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「広告と日本史・世界史に興味があるならオススメの本「たのしいプロパガンダ」。」への7件のフィードバック
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