ガチで独創的なレビュー:「天才詐欺師のマーケティング心理技術」(前編)



ドキュメンタリーとしては面白い。
非常に面白いです。
ドキュメンタリーとしては


一つの番組を見るように、スラスラ読めました。


ただし、マーケティングの本としてみると、
多くの本が既にある中で、無理してこれを選ぶ必要は無いかなという感想を読みながら持ったのも事実です。

何故かと言いますと、
まず、本書は(マーケティングというものを)アメリカ史上実在した詐欺師のストーリーに置き換えて展開された実話です。

その為、一人の人生の経過と共に、ブランディングや業界でのポジショニング、広告・セールス戦略、プロモーションと万遍無く展開されていますが、

その本質自体は既にある他のマーケティングの本と変わらない内容で、目新しくはない。

マーケティングとしてやる事は同じ。
ある程度読み込んでくると、そう感じてしまうからです。


でも悪書だとまでは思いません。
実際とても楽しめました。これは正直にお伝えしたいです。

ストーリーに置き換える事で難解でもなく、具体例のオンパレードなので心にスッと落ち続ける明快さはあります。


ここで私に一つ提案させて下さい。
この本をレビューするにあたり、二つの側面を重視しようと思います。

  1. ドキュメンタリーや物語としての面白さと斬新さ。
  2. マーケティングの本としての平凡さ。


主に1に偏るかと思いますが、この二つの側面でお話させて下さい。
そして、もしあなたがマーケティングを学ぶ目的でこの本に興味を持った場合は買う必要は無い本です。

後編でどのような本がオススメなのかはお伝えしたいと思いますが、ここで離脱して頂いても構いません。
あなたの大事なお時間です。
1に好奇心をお持ちの場合は読み進めてみて下さい。


本書の導入編では「清濁併せ呑む」の精神論をテーマに説明しました。



肉付けと娯楽。

お金と時間の余裕はありますか?

真剣に書いた著者には申し訳ないのですが、
私には娯楽と思えてしまうので、それらがある時に読んでみても良いかなとは思っています。

先程書きましたように、ビジネスの流れを時間の経過と共に最初から最後まで万遍無く、史実と考察と共に展開。

「マーケティングの心理技術」の言葉に嘘はありません。
確かにその通り。

ある程度読み込んできますと、目新しさは無い事には触れましたが、
マーケティングの本にこれまで触れた事がそれほどない場合、浅く広く知るには悪くはないです。


ですが、
いきなりこれ読んで実践しようものなら・・・
本当に詐欺師になってしまう。

もしくは胡散臭くなってしまう。

役立つ視点は多いですが、やるべき事をやって、他に触れた上でのあくまで肉付けですね。
プラスアルファの見聞を広めるには有効だと言わせて下さい。

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本書の概要と評価。


ダイレクト出版

 信じさせる事は、もしかしたら皆が幸せ。


総合評価★★★★(4.4)
(理由は概要にて記述)

実はこの本、ダイレクト出版の月刊新書にて送られてきたもので、自らの意思では購入していません。
月間新書一覧はこちら。こんな本がラインナップされています。



怪しー!。

声が出ました。

封筒を開け、手にした瞬間。
しかもダン・S・ケネディ氏の本。

恐らくここまで来たあなたもその怪しさに好奇心を揺さぶられていると思います。
私は揺さぶられました。

表紙の演出もまた憎い。
広告戦略としてそれも参考にしながら手に。



導入から読み始めると、ダン氏の開き直りの言葉から始まり、

度を越した、常識外れの広告やマーケティングは、詐欺まがいのものに至るまで大好きだ。(p1)


アメリカ大恐慌の時代に、驚異的なマーケティング力とプロモーション力で多額の金銭を稼いだ一人の医師を主人公にした実話。
その医師が詐欺師という。

彼の名はジョン・R・ブリンクリー。
彼の略歴についつい笑いがこぼれる。アメリカ史上最大の重罪人との事。

でも、

詐欺師になることを勧めているわけではない。(p101)




この本のポイントは3つ。


人生で大成功した人物であれば、その人物の中に見出し、学び取れることがいろいろある、と私は考えている。(中略)業績は倫理に叶っていないが、彼が編み出したマーケティング戦略は時を経ても色あせていない。(p9)


ダン氏がまず着目したのは、
善悪は別にして、どのように稼いだのかを史実や子孫のエピソードから調査。
そして、マーケティングのヒントになりはしないかと興味を持った事です。

それがこの本の一番のポイント。

そしてニ番目のポイントに行く前に質問があります。

あなたは詐欺師の仕事は何だと思いますか?


「騙す事でしょ?」


「お金を盗る(とる)事?」



そう思うかもしれません。
でも実は一番必要で大切な事があります。




それは
「信じさせる事」。

詐欺師の本当の業務(?)は「人に信じさせる事」。
人に「信じたい」と思わせる事。

信じるための根拠の提供は、ごく普通の、誰にでもわかるような説得でいいが、信じたいという強い欲求が伴わなければ、「パワー不足」になるということである。(p120)


善であれ、悪であれ、正当であれ、悪戯であれ、
人は信じるからお金を払うという世の摂理があります。

詐欺師はその信じさせる事に長けているという訳ですね。
マーケティングに信用・信頼に至るプロセスは欠かせません。
もしこれまでにセールスやマーケティングに触れてきた事のある人でしたら頷けるかと思います。

そのように、二番目のポイントは到底信じられないものをどのように信じさせていったかの考察です。
または、信じさせるコツ。

しかも今のような時代背景とは全く異なる大恐慌時代。
歴史の教科書にも出てくるのでご存知かと思います。

そんな情報を得るにも広めるにも困難を伴う時代に、

どのようにしてアメリカ全土に
驚異的なプロモーションをしたと思いますか?


これが三番目のポイント。

ダン氏は特にそこに着目。

私も素朴な疑問を持ちました。
あなたは如何ですか?

マーケティングの原理として古今東西やる事は同じとわかっていながらも、時代を読んで、使えるものは全て使った主人公の手法や執念は一読の価値を感じさせます。


次から次へと繰り出される奇想天外なアイデアはDNAレベルの才能。
ルパンもビックリ。

現代のように、今あなたが使っている目の前のインターネットもテレビも無い時代に、マーケティングの原理を世に先駆けて確立した類稀な才能の物語は面白いです。

ただ、現代では手段が沢山あるので、応用するには特別な事ではなさそうな所が少し残念。
その辺が本書が実用的ではない所。そして娯楽。


一例としてプロモーションの為に自分でラジオ局を作ってしまうというアイデアが出て来ます。
ですが、ダン氏も言うように、現代ではYouTubeというものがある。
誰もが局を持って発信する事が出来る時代。

ただ逆を考えれば、1923年当時、そのアイデアを開拓して実行したその姿は賞賛と感動に値します。
現代のように便利になっても実行するかしないかは別問題ですから。

とはいえ、
これは映画にしたら絶対に面白い。

開き直りから始まって・・・。

 

この本はまるで詐欺師のマニュアルみたいですけど・・・・・・。身びいきかもしれませんが、きっとみなさんにも面白いと思ってもらえると思います。(p12) (ブリンクリー氏の親類の言葉)


21のマーケティングの原則で本書は構成されています。


これ自体はビジネスを学んだり、ビジネス書を読んで来た身からすると特別なものではなく、必ず何処かしらで言われてきた事、取り上げられてきた事です。



これを見ると、
「んー・・・」
焼き回し感が否めません。

幅広く、ぬかりなくマーケティングを行ってきた主人公に敬意を払いますが、様々な事を物語の名の下に一冊にまとめた印象は拭えません。

マーケティングやプロモーションの一連をドライに実用的に学びたいとなると、別の書籍で事足ります。
どのような書籍がいいのかは後編でお伝えしようと思います。

幅広い分、関連分野も多し。

そして最終評価は。


冒頭の言葉の繰り返しになりますが、
ドキュメンタリーとしては、ダン氏の考察も物語も面白いです。

ぶっ飛んでいます。

ただ、マーケティングの手法論としては、まとまりがあり、わかりやすいものの平凡な印象です。
新しい事を学びたいという期待には応えられないかと思います。

あなたならどちらを取りますか?


ここでの評価は、
好奇心を重んじてドキュメンタリーと捉えるなら★★★★★(5.0)
マーケティングを学べると期待しているならば★★★(3.8)

そのような訳で総合★★★★(4.4)の評価をしました。

ここで「天才詐欺師のマーケティング心理技術」を見たい


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あの事件を思い出しました。覚えていますか?




某クラシック音楽家のゴーストライター騒動。

個人的に感じた本書の内容とその騒動の共通点。それは・・・。

劇場型のマーケティング。


一言で言えば、自らをストーリーの主人公に仕立てて、演出の徹底による心理操作。

それが抜群に上手い。唸らされます。ここまでやるかと。
政治の世界でもこの手法はありますね。
「小泉劇場」のような。

両者の行った事に対しての是非や詳細にはここでは触れません。
ただ実際に、大多数の人が信じて感動した事実はある



この本を読み進めていくと、主人公のブリンクリー氏の成功した一番の理由として、
自分をどのように仕立てるかのポジショニングが上手いのだなと思わされます。

某音楽家も同様ですね。
イメージ戦略とも言えます。

私も実際の事業の中で、正当に仕立てる事の重要性は感じています。
例えば、



こんな時あなたはどう思いますか?


ある一人の営業マンがあなたの前に現れました。
自社の商品サンプルとパンフレットを持って。

特に忙しくもなかったあなたは彼と話をし始めます。
ちょっとした雑談から。


その雑談が盛り上がっていきます。

仕事や会社の話になった時、ふと彼は自身が勤務する会社の愚痴を言い始めます。

黙って聞いているあなた。

「残業が多い」
「給料が少ない」
「上司がデキない人だ」

そんな話をしているうちに彼はセールスへの話に入ります。
その商品はあなたが欲しいものでした。

買いますか?




私は買いません。

結論から先に言うと、
自虐は意味がないし、自社を立てておいた方が印象も良くなるし、買ってもらえる確率は高くなります。

誤解を招く表現かも知れませんが、その方が自分のリターンにもなりますし、結果として皆にとって良い事。

これから売ろうとしているのに自社の文句を言って価値を下げる事は無意味。
言葉は怖いもの。
巡り巡って自身の価値も下げる。

これは私が経験した実話です。
丁重に断りました。


私のいるデザインの仕事の中でも、デザイナーを「先生」と呼ばせて(本書の言葉を借りれば)権威付ける事は逆に皆の為になる。
あなたも仕事の中で他の誰かを役職で呼ぶ事があるかと思います。

それらは決して嘘をつくとかハッタリではありません。

どのみち、嘘ならばボロが出ますが、むしろ価値の問題に近いかもしれません。
立てる事で価値を示しておく心理操作。

シビアな話をしますと、蔑まれているものは誰も買わないと戒めています。



そういった細かい演出が日常の仕事でも結果を左右するのだなと悟った事は多々ありますね。
主人公は極めてそこを徹底したのが見受けられます。

全ては信じさせる為に。
信じたい人々の欲求を満たす為に。


詐欺師のマーケティングもだけど、
ストーリーブランディング。


主人公もこの本自体も、
ストーリー仕立てにして演出という意味ではストーリーブランディングと同じですね。

その利点も含まれているように感じました。


試してみるのは悪くないと思わさせてくれます。
そこで思い出したこの書籍。

「ストーリー・ブランディング」


ストーリーブランディングという演出や広め方も、正当な手法としてこの世に存在していますし、私はこの本をオススメしています。

本書は詐欺師が主人公ですが、この本ではそういった悪戯な事は全く無く、人々が受け入れやすいような広告の作り方にも焦点を当てています。




人に興味をもたらせて、信じさせる。

というと言葉が悪くなりそうですが、
手段は置いておいて、信頼をもたらすという事はマーケティングやセールスには欠かせない事。

また、良い事も悪い事も含めて多くの選択肢を持っておく事は、勉強としても自己防衛としても役に立っています。
今以上に見抜く事が出来る。



主人公の演出の巧みさにおののきつつ、後編では彼のもう一つの才能であった大胆さに進んでいきます。
もうちょっと彼の才能に付き合いたいと思わされながら。
成功はいつもクレイジー。


もうちょっとガチで知っておきたいから後編を見たい


信じさせる事は、もしかしたら皆が幸せ。
「天才詐欺師のマーケティング心理技術」を見たい
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ガチで独創的に読んでくれたあなたに謝謝。

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