そんな魔法は無い。
始めに著者はそう言います。そういう手取り足取りのテクニックやハウツー本ではありません。
ですが、
一冊で何度もおいしい。
そんな印象です。
「1行バカ売れ」
あまりに大胆なタイトルに疑いを持った事は否定しません。
「何だこりゃ?!」
と。
あなたももしかしたら同じ気持ちが心の奥底にあるかもしれません。
と同時に興味を惹き付けられませんでしたか?
それがまず、本書のカラクリだと思い知らされます。
タイトルからもわかりますように、有効なキャッチコピーがテーマです。
そして何故かカバーが二重に付いています。
作り方を教えるという本ではありませんね。ご注意下さい。
分析書と言っても堅苦しい内容ではなく、むしろ実際に使われた成功例を軽快なリズムで解説してくれています。
どんどん読み進めていくと、売れた言葉の原理を紐解く事が出来て、説得力すら感じさせます。
本書の大きなポイントは、その具体例の数々。
例だけで成り立っていると言っても過言ではありません。
それらを著者の川上徹也氏が分析していく中で、良い所や理由をピックアップしていく内容です。
その解説にも、筋の通った論理が横たわっています。
加えて、過去のものも現在のものも、有名なものもマイナーなものも多岐に渡って良いものを取り上げていますので、著者の見識の広さには驚かされるばかりです。
読み物としての好奇心も満たされていきます。
ただ一つ、心掛けておかねばならない事がありますのでお伝えさせて下さい。
Contents
このベストセラーを読んだ事はありますか?
「現代広告の心理技術101」
レビューでも触れましたが、この本は洋書で、
原題は
“Cashvertising”
現金のCashと広告のAdvertisingを合わせた著者の造語でしょう。
日本語では「金のなる広告」といった所でしょうか。
私が今でも、コピーや広告に関して役立てている書籍の1つです。
ところで何故、この本の話題を持ち出したのか?
結論から言うと、タイトルの類似性もさる事ながら、基本概念はこの本と同じなのです。
人はどんな言葉に反応したり、興味を持つのか。
人間の心理や欲求に関わるその内容は被ります。
人間にはそれだけの不変の真理がある事の裏返しですね。
そうは言っても、「現代広告の心理技術101」の方は、具体例よりも人間の消費者心理からの言及をしている心理学の本なので、そもそもの趣は両書で異なります。
著者のコピーへの研究熱心さが伝わってくる。
プロのコピーライターに熱心だと言うのも失礼かとは思いますが、上記の本と基本概念が被るというのも、沢山の書籍を読んで来た上でまとめた事の証でしょう。
本書は、今まで数多く書かれてきた「売るためのコピーライティング」の本を整理分析しなおして、古今の国内外におけるさまざまな事例とからめつつ、新しくわかりやすく手軽に読めるように、オリジナルの言葉や分類で法則化したものです。(p14)
著者本人もそのように言っています。
更には、どの本も過去の名著の影響を受けた書籍が多いので、最終的には似たような内容になるとも。
突き詰めれば、本能は変わらない人間そのものに行き着く事になります。
そのような訳で本書は、著者が多くの書籍を読んで、更に実際のものを探し出して研究をしたキャッチコピーの分析書ですね。
良い意味でとてもマニアック。
だから、ある意味一冊で何度でもおいしい。
更には、
日本語のキャッチコピーの巧みさを解説。
これにはリアリティーがあります。
先の本「現代広告の心理技術101」のレビューでは、洋書の翻訳の言い回しがわかりづらいという声も一部ではありました。
あなたも既に見た事があるかもしれません。
本書には当然の事ながらその心配は無く、どこがどう良いかは手に取るように理解出来ます。
あなたが手始めにキャッチコピーを作るにも、既に作ってきた場合でも、ちょっと参考に出来そうなものが探せそうです。
私は読みながら、自分ならばこう使うかな、こう作るかなと空想も同時進行。
また著者の研究成果を如実に表す、親切な部分があります。
それは、
コピーが生まれるまでの
背景を知るドキュメンタリー。
背景を知るドキュメンタリー。
その要素が垣間見られる所です。
ある企業がどのような状況で、どのように考えたかのストーリーに始まり、結末にどんな言葉のチカラでコピーを生み出したのか。
大半がその構成。
あくまで推測ですが、それを調べ上げるまでには、マニアックさも手伝い、多くの時間を費やしたのではないでしょうか。
1つのコピーの表面だけを知るのではなく、それが生まれた背景をも知る事で、コピーや人間心理を深く知る事が出来るように感じさせます。
うわべのハウツーではない所に好感が持てますね。
売れるキャッチコピーの鉄則。
人は「自分に関係がある」と思わないと動かない。
これが本書の基本テーマです。
あなたも自分と関係があると思い、今ここを読まれているのだと思います。
本書に興味を持っているから、自分と関係があると感じる。その人間の心理です。
関係が無いと思えばスルーしますよね。
そんな中読んで頂き有難うございます。私も勉強になっています。
どのようにしたら自分と関係があると思ってもらえるのか。
この考え方を「自分ごとにしてもらうための5W」と称しています。
本書では第一章から第五章にかけて、この5つの「何を言うか」について、具体的にバカ売れした事例を交えながら解説していきます。(p56)
全体の流れが5Wに絞られています。
この5つが、あなたがスルーされない為の奥義。
正直に言ってしまうと、もっといろいろと知ってみたいと感じさせる部分もありました。
ですが、絞られている事で逆にわかりやすいのかもしれません。
今すぐに出来そうな錯覚さえ起こさせます。
やはりオグルビィ氏が出て来ます。
ちょっと余談ですが、広告やコピーの話には欠かせない広告の神様の話題が登場。
デイビッド・オグルビィ氏。彼の著作はこちら。
「「売る」広告」
どの書籍にも必ずと言っていいほどオグルビィ氏の名前は頻繁に出て来ますが、本書も例外ではありません。
ご存知かどうかは定かではないのですが、かの有名なロールスロイス社のキャッチコピーのエピソードが引用されています。
バカ売れさせたいですか?
はい、モチロンです!
と言いたい所ですが、読んでみて、売れる言葉を知ったとは思っていません。
むしろこんな教訓を改めて得たような気にもさせます。
「ちょっとした言葉一つで場面はガラッと大きく変わる」
あなたにもこんな経験はありませんか?
たった一つの言葉の使い方で、人間関係が良くなった事も悪くなった事も。
キャッチコピーも一つのコミュニケーション。
同じように、たった一つの言葉で企業や商品を活かしも活かさなかったりもします。
数々の著者のマメな解説と明かされる真実を通して、たった一行に各企業や生産者達の沢山の想いや歴史が込められているのを知り、励まされもします。
その励まされる度に、また一段と言葉の感性が豊かになる感覚を覚えるかもしれません。
人の想いの裏側さえも本書で辿っていく事が出来ますから。
「1行バカ売れ」
角川新書
バカ売れの裏側に、バカじゃないストーリー。
最後に:
著者も言うように、これを読めば売れるという魔法の言葉やテクニックを伝授するものではありません。
そんな魔法の1行を書くテクニックは載っていません。(中略)そんな期待をしてこの本を読み進めようとしているのなら、残念ながらご期待にそえません。この先は読まないほうがいいかもしれません。(p11)
ただ、一行のキャッチコピーに特化して、イメージしやすくリアリティーのある書籍を追及するのでしたら、問題無いと言っても差し支えありません。あなたが既に知っている例も多く出て来るでしょう。
また、コピーやコピーライティングの書籍は多くあります。
ですが、経験者であるプロのコピーライターが、1行のキャッチコピーに情熱を燃やす有難さは本書に感じます。
もしあなたがヒットするキャッチコピーの背景と真髄に触れたいのでしたら、本書を通してその裏側を覗いてみると良いかも知れません。
バカ売れの裏側に、バカじゃないストーリー。
「1行バカ売れ」を見たい
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「「1行バカ売れ」疑いながら買ってみたけど、評判以上に良かった所が多い不思議。」への8件のフィードバック
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