うるせぇオヤジの文章講座。
ちなみにこれは最大級の褒め言葉だとわかって頂けますか?
また、コミュニケーションと題されていても、文章上達のための本なのです。
文章力及び文章への審美眼を高めたいあなたには是非オススメしたい書籍。
「コミュニケーション技術ー実用的文章の書き方」
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1986年初版という古い部類に入る本ですが、色褪せてはおらず、古さを全く感じさせません。
今でも普通に手に入り、高い評価が得られているのが、読み込むうちにわかってくるのではないでしょうか。
現代のことにも触れているような先見の明もあります。
そして、美しい日本語の文を受け継ごうとする、ある種のウルサさ・厳しさは感じられますね。
ところで、何故「コミュニケーション」なのか?
対人コミュニケーション術の本だと誤解があるかもしれません。
実は、この理由を語ることは、本書の一大コンセプトを語ることに等しいのです。
コミュニケーションとは「意志などを、言葉や文のみならず図や表によっても伝達すること」を意味する。(中略)ライティングとしないでコミュニケーションとしたのは「単なる作文技術ではなく、口頭発表法や図表の書き方」までも指導しているからである。(p7)
実際に、著者の篠田義明氏が受けたミシガン大学工学部の作文指導の授業でも「コミュニケーション」と使われているとのこと。
そして先の引用から判断すると、書類作成やWEBライティングは勿論のこと、文の構成・流れをもマスター出来るのでプレゼンテーションにもOKだとわかります。
時代もジャンルも問いません。心・技両面からなので、学校の授業で取り上げても良いくらいです。
文章講座を受けたいあなた!
実用的文章を実用文と表現・定義するところから考えていきましょう。
Contents
まず実用文への心構えからみっちりと。
実用文とはどのようなものと思っていますか?
そんなこと知っているよと、どうか侮らないで下さい。
その定義を冷静かつハッキリとさせるところから本書は始まります。
つまり、実用文は読み手に行動を求めるのが、普通だから、読み手を絶えず念頭に置き、意識して書かねばならない。(p3)
ハッキリと認識することはとても大きく、今後の言語の扱いにも多大な影響を及ぼすと言っても過言ではありません。
実用文では、誰が読むか、つまり、読み手を絶えず意識して、読み手に合った内容に編集し直す必要があるからだ。(p12)
さらにこの冒頭では、実用文というものの対義語として芸術文という表現が使われています。
そこで、この世の文章をどちらかに区分する場合、決め手となる大きな存在があるのはもうおわかりですね?
そう、「読み手」の存在です。
本書で語られる実用文では、読み手が判断して理解出来るかどうかが重要なポイント。
だ・か・ら、コミュニケーション。
コミュ障な文ではいけません。
文章によってより良いコミュニケーションを取っていくための方法を探求していく本と置き換えることも出来ますね。
このようにして第一章では技術の前に心構えの伝授。
コミュニケーションでは、
文章・言葉のスリム化が第一。
文章・言葉のスリム化が第一。
個人的に、本書で学んだと感じられる技術は大きく分けて2つ。
1つ目は文章や言葉のスリム化。
2つ目はパラグラフや論理の組み立て方、そしてそのバリエーション。
文章の部分的な検証から全体の構成という流れです。
では、1つずつレビューしていきますね。
まずは1つ目の文章や言葉のスリム化から。
よく目にする「新製品の展示を行う」は「新製品を展示する」がよいし、「水圧の試験を行った」は「水圧を試験した」がよい。(p33)
現実はいかに無駄な言葉やまどろっこしい文が多いか。
言葉をこねくり回すことがハイレベルで正義だと思いがちな世相に一石を投じているようです。
このようにうるさいチェックが頻繁に出てくることは、国語力と言語感覚を鋭くさせてくれると言えます。
このスリム化の技術の代表的手法としては、
ワンワード/ワンミーニング。
またそれが発展してワンセンテンス/ワンアイディア。
さらにはワンパラグラフ/ワントピック・・・。
これらが序盤の各章に登場。
子供から大人まで、誰にとってもシンプルでわかりやすい手法です。
芸術文など、表現が大切な文章においては、もっとも表現力に富んだ、生きている言葉を選んで使わなければならないが、表現力に富む情緒的な言葉は記述をあい昧にし、読む人を惑わし、誤解を招く結果になりかねない。実用文のように感情を交えず、事実を正確に伝えることを目的とした文章においては、あらゆる誤解を排除しなければならないので、どのようにでも解釈できる用語の使用は避けなくてはならない。(p18)
鋭い指摘の連続に、あなたの目も肥えていくに違いありません。
主観では、大人になった今よりも、学生時代にこんな授業を受けたかった想いも残ります。
やってはいけないことのオンパレード。
ほとんどが具体例で成立。
著者が日常生活で集めた文章・・・専門書籍やテキスト・企業カタログ等からの引用が多いです。
それらを一つ一つ解析。
最終的にどのように直して文章にするのかを追及していくパターンです。
どうやら巷の文も不適切なものが多いようですね。
名詞の反復を避けるために、「それ」「これ」「彼」「彼女」「あなた」「かれら」「われわれ」「当社」などの代名詞を使う人が多いが慎重を期したい。代名詞が指すものが書いている人にしかわからなくて、読み手に迷惑をかけることがあるからだ。次の例を検討してみよう。(p38)
言うまでもなく、これらの具体例はわかりやすく有難いのですが、困ったことが一つ。
それは、引用文の内容があなたにとって未知の分野のものかもしれないことです。
例えば、化学・テクノロジー等の難しい文章の場合には、読んでいて退屈で、字面だけを追っていく状況になる可能性も否定出来ません。
解説や良文・悪文の見比べ方そのものは問題ありませんが、そんな心の準備は必要そうです。
それは正直にお伝えしなければなりません。
とは言うものの、一度読んで言わんとしていることさえ理解すれば、今後のあなたのチェックの書になるでしょう。
私自身はそのように捉え使用しています。
どこがいけないのか?
を常に時間を掛けて見極めたい。
を常に時間を掛けて見極めたい。
さて話を戻しますが、例文に対してクイズに答えるように考えてみるのもアリ。
技術と知識習得のためには時間をあえて掛けてみたくなるところです。
文をわかりにくくしている原因の一つに、修飾する言葉と修飾される言葉とのつながりが明白でない場合がある。これは両者が離れすぎていることによる。某新聞の見出しに、
「勇敢な抱きつきスリを捕まえた大学生」
とあったが、これでは「勇敢な」は「スリ」を修飾してしまう。(p54)
まさに反面教師。
ですが、安心して下さい。
全体を通し、粗探しのようなネガティブでイヤな空気はありません。
改善方法を前向きに探して検討していくことから、むしろ、
気を付けなければいけないなっ!
そう身が引き締まる想いにさせます。
その上、文章の書き方というものは、義務教育も含めて、あまり習う経験がありません。
著者も一貫してその部分を懸念しているのです。教育への疑問にも気付かされます。
だからこそ時間を掛けていきたいところですね。
さて、次に第2の技術に入ります。
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後半はパラグラフの解説がメインに。
本書の3分の2がパラグラフ関連。
実は、これだけの分量を占めているのには理由があります。
つい先ほど、少し触れたことを覚えていますか?
それは、著者が日米での教育の違いを懸念しているからなのです。
冒頭で触れたミシガン大学での英文作成の試験。
日米の学生が共に受けたその結果に対して、大学からこんなコメントが出たと著者は言います。
「その結果面白い現象に気付きました。文法の平均点は日本の受験生のほうが上なのです。しかし、不思議なことに、パラグラフの展開法とデータの取捨選択が日本人は極めて弱いのです。したがって、一つの文として読むと、その文だけは理解できますが、パラグラフ全体を通して読むと何が言いたいのかが理解できないのです。つまり、日本人の多くは、読み手が理解できるパラグラフで文章を書いていないのです」(p70)
どうしてそうなるのか?
私自身の経験上感じることでもありますが、元来英語は論理を求められる言語と言ってもいいでしょう。
その思考回路で生きている彼/彼女らは、行間を読むなんてことも無く、常にしっかりとした説明と納得が必要です。
また”Why?”と”Because”の繰り返しで会話が成り立っていくというのも過言ではありません。
日常生活で、論理というものに鍛えられているのです。
その一方で、日本語はとても自由度が高く、時に感覚的で非論理的なのも否めません。
それに輪をかけるように、察することを重んじ、論理的な文を習うことが少ないのではないでしょうか。
ただ、誤解はしないで下さい。
これはどちらが良いか悪いかではないのです。
重要なのは、弱点を冷静に見極め、かつ相手の土俵もしたたかに研究した上での教育が何よりも必要だということです。
では、弱点のパラグラフや論理をどのように理解していくのか?
図解が多く、わかりやすい。
パラグラフの扱い方として挙げているのはこの3つ。
- まとめ方
- 展開法
- つなぎ方
効果的なパラグラフを作るにはいろいろな方法が考えられる。これらは、文を書く経験を積めば積むほど、独自の方法を案出できるだろうが、その前に基本となる方法を身に付けることが大切だ。(p102)
まるで数学的で、パズルのように考えていくようです。
※参考記事
こうしてパラグラフを考えることは、いつの間にか構成力や論理的思考力を磨くこととイコール。
さらには、トーク力、そしてプレゼン力にもそのまま役立つということになるのですね。
情報化時代のドキュメントは、その種類を問わず、ドキュメントの目的とするところを、第一パラグラフで明示するがよい。(中略)目的を書かない人はレポートを書く適任者とはいえない。(p124)
文のつなぎや構成が苦手なら、まさに読む価値あり。
話が途中で飛んだり、脈絡が無くなってしまうあなた。
そんな不安を感じているなら、丁寧な本書は有効です。
パラグラフの展開法を知らない人は、書こうとしている思想も中途半端であり、非論理的だとみられても仕方がなかろう。(p139)
コワイ、コワイ。
私も様々な書籍で研究してきました。
本書同様、この辺のものが気に入っているので紹介させて下さい。
The Million Writing (ミリオンライティング)
これはコピーライティングに関するものですが、書籍ではなく情報商材なので、ダウンロードが必要です。
情報商材といっても価格は驚くほど手頃です。
原稿用紙10枚を書く力
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こちらは文章を書くという行為はどういうことなのかから始まる書籍です。
昨今SNSなどに見られる、どこか軽く考えてしまいがちな文章作成。そこへの警鐘を鳴らしているところが共通しています。良書です。
こんな書籍も見つけました。
本書以上に悪い文にクローズアップした書籍。
なかなか斬新な内容です。
相手を想定し、何をどう伝えるのかを常に頭の片隅に入れる思考回路は、相乗効果として多くのことを上達させるのだとわかりました。
まとめ。
読み終えて、文に対して厳しく生まれ変わったような心持ちに。
新しい知識が蓄積され、そこで生まれる安堵や自信がそうさせるのかもしれません。
それほど目立つ書籍ではありませんし、今風な色気も無い本です。
ですが、基礎学問や一般教養として読んでみるのがオススメですね。
この本から、実用文を書こうとしている人に、そのコツを体得していただき、ゆきづまった際の脱出の糸口として頂ければ、というのがわたくしのささやかな願いである。(piii)
淘汰されずに現役で売られている理由も、手にしてみるとわかるでしょう。
私としてはそこが伝われば、というのが願いです。
「コミュニケーション技術ー実用的文章の書き方」
中公新書
なかなか会えない、うるせぇオヤジの文章講座。
最後に:
日本語であれ、外国語であれ、
文語であれ、口語であれ、
伝達は文を作ることで成立します。
私たちの日常会話も、外国語の習得もそうではありませんか?
突き詰めれば、いかに早く的確に文を作るかにかかっています。同時に、意味も論理も流れも重んじられます。
そうでなければコミュニケーションになりません。
これは、社会に出れば、なかなか人は教えてはくれません。
もしあなたがそうならないよう、一から厳しく学び直したい場合は、是非本書のうるせぇオヤジの文章講座を受けてみて下さい。
懐かしい気持ちが生まれると共に、貴重な体験になると言っても差し支えありません。
なかなか会えない、うるせぇオヤジの文章講座。
「コミュニケーション技術ー実用的文章の書き方」を見たい
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