ガチで独創的なレビュー:「Simplify(シンプリファイ)」(前編)



あなたの事業をこのようにシンプルにしませんか?

何故ならば、今の複雑なものをシンプルにする着眼点を持てば、それは利益も増える構造になり、成功へ近付くから。

シンプル化に成功すると事業収入が大幅に上がる。(p274)


一言で言えばそのような書籍です。
今のあなたの事業や、生み出す商品・プロセスはごちゃごちゃしていませんか?

そのように、もしあなたが自身で事業をしていたり、決裁する立場にあるのでしたら好奇心を持って良いのではと感じさせる書籍です。
サブタイトルは、
マーケットを支配する最強のビジネス戦略。

ただ、シンプルにする方法論ではないので、ご注意下さい。

ではどんな本なのか?
そこをレビューしていきます。

本書の導入編では、仕事を知り尽くす着眼点から触れました。



シンプル化で成功した企業の実例の分析。

方法を述べてあるというよりも、その成功例から必要な事を抽出して読み取っていく内容ですね。
業種は多岐に渡ります。

あなたがご存知の企業や、日常使っているであろう企業も出て来ます。そして日本の企業も。

名著を生み出したリチャード・コッチ氏の視点や解説に期待しながら読み進めていきます。

スポンサーリンク



本書の概要と評価。

プロポジションと価格のシンプル化。


これが大きなテーマです。

「価格のシンプル化」と同様、「プロポジションのシンプル化」も市場を大幅に拡大できる。価格が低ければその商品が多くの人たちの手に届く一方、プロポジションが優れていれば、その商品の使用頻度ははるかに高くなる。(p91)


もしかしたらこう思われるかもしれません。
価格はわかるけど、プロポジションって何?



万一プロポジションがわかりにくいという方の為に軽く説明を添えておきます。

プロポジションは「提供価値」。
本書を読んでいくと何となく、事業や商品の事を指しているのがわかってくると思われます。
もう少し具体的に言うと、例えば、生産ラインをシンプルにしたり、商品自体にある無駄を省くといった所ですね。
顧客に提供していくものの根幹をシンプルにしていくのが見て取れます。

 

そのシンプル化は成功例で手に取るようにわかる。


わかっていそうでわからなかった事がスッキリと明確に。

序盤の第一部で7章に分けた成功例をドキュメンタリー風に。
その7つでは、何をシンプルにしていったのかの方向性は異なり多様です。
まずそこに好奇心が満たされていくと同時に、あなたにとって相応しいものを探す事も出来るのではないでしょうか。

20世紀から現在までのサクセス・ストーリーはほぼすべて、シンプル化が鍵になっていることだった。(p12)


具体的には、流通をシンプルにする事から始まり、生産システムや商品設計、更には余計なものを所持しない発想へ。それは車を一台も所持しないタクシー会社を一例としています。

メインとも言えるこの第一部には全体として流れがあり、ジョブズ氏率いるApple社の成功例で一つの転換を迎えます。
その詳細は後述。
著者もここには力を入れたいらしく、気合が入っていますね。


余談ですが、ジョブズ氏のシンプル化の考えは禅の影響を受けたと言われています。
これは本文中でも言及されていますし、世界でも有名な事実です。
本書の表紙の波紋のような文様は、禅の文化を代表する石庭がモチーフになっているのかなと個人的には推測しています。

シンプルの代表格。



さて、それぞれが独自の着眼点でシンプル化していった革命の連続。
そのストーリーは面白味があります。
「そうだったのか!」と。
理に叶って合理的な事に気付かされていくかもしれません。

そうして実例を読んでいくうちに、シンプル化の着眼がいつの間にか定着。
同時に、私達が知る企業のサービスの裏側には、このような発見やイノベーションを経て、今日まで生き延びてきたのだと感じさせます。
その成功例の最後には著者からの総括。

その後は、

分析結果をもとに、シンプル化の方法。


冒頭でも書きましたが、こうすればいいよという方法論ではありません。
場合によっては具体性に欠けてしまうかもしれません。
あくまで分析結果から解説をしていく経済誌のようです。

シンプル化に成功した者(と失敗した者)たちの過去の行動を例として取り上げ、そこに私たちが実例研究と極めて有益な戦略原理から抽出した教訓や経験則を散りばめながら、話を進めていこうと思う。(p108)


あなたはプロポジションのシンプル化を目指しますか?
それとも、価格のシンプル化を目指しますか?



ちょっとした適性テストがあり、その後、それぞれのシンプル化の代表格である商品設計と価格戦略の解説へ。
この辺りは成功例をさらに詳細にまとめたものなので、復習になるでしょう。

個人的にはクオリティーの高い流れと感じています。

そして最終評価は。


当初の印象よりは面白さを感じさせます。

製品やデザインに携わる身として、シンプルにするという何気無い事にもこれだけの着眼点を授けられた事は、今後の事業に有益と言えます。
そして、企業分析書でありながら意外にわかりやすい内容です。



もしあなたが事業等を行っていて、シンプル化の視点に好奇心をお持ちならば、★★★★(4.8)。
商品やサービスを扱っているのならば、尚有益な考え方でしょう。
発想の転換も呼び起こすような書籍です。

一方で、仮にそうでなくても、好奇心のみで読む事も可能ですが、その場合は★★★(3.8)。
実務的な話が続く事実は否めませんが、見方がスッキリしていく感覚に。

そのような訳で総合★★★★(4.3)の評価をしました。
個人的には評価していい書籍だと思っています。

ここで「Simplify(シンプリファイ)」を見たい


スポンサーリンク

 

Simplify(シンプルにする)に必要な事はひらめき。


そのひらめきは仕事や業界を知り、疑問を呈する所から始まる。

前半の成功例を深く読み取っていくと、大々的なイノベーションの根底には、やってきた人間だからこそ気付く素朴な「何故?」が存在します。
その「何故?」が「ここをこうしたらどうだろうか」という好奇心へと変わっていく歴史を知る事に。

フォードがひらめきの瞬間を迎えたとき、ライバル企業は数百社あった。(p28)

 

顧客に最終的な組み立て作業を担ってもらえれば、コストを半減できるのではないか。このひらめきが、彼の大きな転機となった。(p36)


並み居る企業がやってきた大掛かりな事は真似出来ないにしても、行き着いたそのプロセスを丁寧な解説と共に知っていく事には一読の価値を感じさせます。

また、その本質を知りさえすれば、規模やサービスの大小を問わず使えるものはあると個人的には思いながら、ワクワク。
ちょっとした事の積み重ねですね。



この世のものはとかく複雑になっているとは思いませんか?
文明が発達するほど、複雑に。

導入編でも言及した携帯電話の料金プラン然り、各企業が提供するポイントサービス然り。

わかりづらくしていく事が果たしてサービスなのか?


という思いも、主観ですが、読みながら沸き起こってきます。
本書の原理を適用すると、こういった事を一括する、あるいはシンプルにする企業が現れたら似たような成功例の1つにもなるかもしれませんね。

そんなふうに、世の中や産業構造が複雑であればあるほど、何が必要で、何が不必要かを見付ける力が求められていきます。
本書の成功者達にはその視点があったと言わざるを得ません。
その為には、やはり仕事や業界を知り尽くす事を改めて戒める心境にさせます。

製品にも流通にも、全てに目を向け続ける総合力。
少しだけ気が遠くなりそうです。


Apple社が最初にプロポジションのシンプル化をした。


覚えていますか?
先ほどの第一部の途中で起きる転換。

Apple社を例にしたプロポジションのシンプル化の中で、本書に新しい概念が登場します。

それは、それは商品・サービスを生むにあたっての、

  • 利便性
  • 有益性
  • 芸術性



利便性・芸術性・有益性を意識することで、彼(スティーブ・ジョブズ)は「使う喜び」を味わえる商品を誕生させたのだ。価格も重要だったが、最大の目標に比べればさもないことだった。(p59)

著者はここでプロポジションのシンプル化を更に3つの指標に分けて、判断。
それまでの流れでは、主に流通や生産システムのシンプル化により、価格を下げてコストカットをする流れ。
そんな中、スティーブ・ジョブズ氏はむしろその価格のシンプル化には目もくれていません。

プロポジションをシンプル化すれば、大きな利益をもたらす熱心なファンをつくり、市場のトップに躍り出るブランドを築けるかもしれない。(p62)

先の3つの指標からなるプロポジションのシンプル化を徹底。
それにより、ファンが増えて、ブランディング化されていく。
価格が高くても売れるだけの価値提供が、彼なりのプロポジションのシンプル化とも言えます。
とても見るべきサイクル。大きな転換。

そうなると、

実はシンプル化は、コスト削減だけが目標ではない。


では何か?

著者の言葉を読み解いていくと、実はもっと崇高な所にその意味があると一貫して教えられます。
コスト削減だけを声高に叫んでしまう世相にも一石を投じると言っても良いでしょうか。

実際はそんな部分に切り込んだ表現も内容も皆無ですが、どちらのシンプル化も、あくまで喜びを提供する為の模索という所に企業倫理の在り方を考えさせられます。

あなたはその市場で、大事な”買い手”のメリットを増大させながら、同時に自分たち”売り手”のメリットも増大させる方法を見つけられるだろうか?(p100)



両方が得をする考え方。
一般のシンプル化とはちょっと違う次元の内容です。
ブラック企業のように、安価で重労働でもなければ、ただの価格競争の波に飲み込まれる意味でのコスト削減の考え方ではない事。

その視点や発想は大切にしたいと思わせます。

あなたの身の周りは如何ですか?
「喜び」がささやかなキーワードになっていくのに気付くでしょう。

中盤までの成功分析は、有意義で品のあるものでした。
後半はこれらを土台として、さらなる戦略展開を迎えます。

ビジネスの難しさも時折感じながら、あるジレンマが起こる事に。
それを解決すべく後編へ。


もうちょっとガチで知っておきたいから後編を見たい

シンプルにする事は、世の為、人の為、あなたの為。
Simplify(シンプリファイ)」を見たい
スポンサーリンクスポンサーリンク

こんな記事も読まれています。

この記事が気に入ったら
いいね ! しよう

ガチで独創的に読んでくれたあなたに謝謝。

ガチで独創的なレビュー:「Simplify(シンプリファイ)」(前編)」への5件のフィードバック

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)