タイムマネジメントは出来なくても良い。
えっ?
著者はこの思想から始めます。
あなたをこの本に導いたのは「タイムマネジメント」という言葉である可能性は高いが、ちょっと的外れだったことになる。(p42)
私もタイムマネジメントや効率の為の本と思っていました。あなたも同じかもしれません。
ですが、そうでないとするならば、他に何か?
なぜなら、タイムマネジメントなどというものは存在しないからだ。あるのはセルフマネジメント(自己管理)だけなのだ。(p42)
その真意は、人間は時間をコントロールする事は出来ないという事。
自分をコントロールする事しか出来ないから、自分がどう考えてどう動くかにしか焦点が当てられない。
これをする事は将来的に意義のある時間なのか?という自身への問い掛け。
個人的には、この部分に目新しさは感じませんでした。
どちらかと言えば、たいていの人がその考えで物事を行ってきたと思っているからです。
さて、その上で何か得られるものはあるのかと読み進めました。
深めたいと。深めさせてくれるものなのかと。
思考法の本なので、特に序盤は抽象的な表現が続きます。
本書の導入編でも、抽象的な内容について触れました。
気になる所かと思います。
焦点を当てる所をシビアに見極める事に存分に時間を使うと、後にその時間は何倍にもなってあなたの金銭的・時間的余裕となる事。
「アリとキリギリス」のスーパーパワーアップバージョンのような展開。
その内容が、時間を投資して膨らますという本書の概念に繋がります。
せっかくなので、このサイトのポリシーで、建設的に本書の良さを伝えていきたいとは思うものの、表現がやや難解過ぎました。
否、独特の表現方法を理解するのに時間が掛かると言った方が正しいかも知れません。その意味では数回読み込む必要はありそうです。
このレビューに辿り着くまでに3回読みましたが、シンプルな表現が欲しかったというのが正直な感想です。
断片的に良い所はあるのですが、コストパフォーマンスを考えたらあまりオススメは出来ません。
先にお伝えしようと思います。
逆にその良い所が、このレビューを読めば十分になるようにレビューしていきます。
もしあなたにとって、そこが気になるようでしたら読み進めてみて下さい。
それ以外の方には、貴重なお時間ですので離脱して頂いて構いません。
Contents
本書の概要と評価。
「時間投資思考」
ダイレクト出版
ウルトラスーパー「アリとキリギリス」。
総合評価★★(2.7)
(理由は概要にて記述。)
実はこの本、ダイレクト出版の月刊新書にて送られてきたもので、自らの意思では購入していません。
月間新書一覧はこちら。こんな本がラインナップされています。
期待はしていました。
受け取った時の印象です。
時間管理術の本はこれまでにダイレクト出版から受け取ってこなかった事もあり、新鮮な印象。
かつてこの類の書籍は和書で読む事が多かったです。
加えて、実体験から体得するのが一番多かったように思います。
そして本書を読み進める。
全体を通して、抽象的で難解な啓発セミナーを受けている。そんなイメージを想像してみて下さい。
必死に噛み砕けば言わんとしている事に辿り着けるのかもしれない事はお話しましたが、そんな感じが序盤は続きます。
ただ辿り着く度、悪い事は書いていないなと悟るものの、それでも今もあやふやな心境です。
思考法の本はこうなってしまうのか。
禅問答のような、抽象論のような。
誤解はしないで下さい。
そういった書籍がいけない訳ではありません。
私はその類の書籍も多く読みますので慣れてはいます。名著も多いです。
一方で、
何故、本書にそう感じてしまうのかなと考えてみました。
どうやら、(哲学書や文芸書にはよくある事なのですが)著者独自の言葉の概念があったり、意味の掴みづらい横文字がそのまま頻繁に出てくる事が理由のようです。
マルチプライヤー、シグニフィカンス、パラダイム。
あなたはこう言われてすぐわかりますか?
一応、都度日本語の訳が書かれています。
でも、英語には免疫がある私ですら素朴な疑問が。そのまま使う意味があるのかと。
同じ所が訳しているはずなのですが、何か意図があったのでしょうか。
訳の問題なだけに、著者が不憫に思えてしまいます。
余談ですが、そんな中、今回こんな事を思い出しました。
20年ほど前に「脳内革命」という本がありまして、ベストセラーになりました。
私も親に購入されて読んだのですが、未だに何も覚えていないほど抽象的だった記憶があります。
本書の話に戻り、
全体の3分の1ほどの第4章まではPart 1として、そんな掴みづらい展開。
著者にとって、これらの表現は後の展開で必要となる考察なのでしょう。
そしてこれが本書の核心を成すメッセージだ。明日自分に多くの時間を与えてくれる事柄に、今日時間を使うことで、時間をマルチプライ(増殖)するのである。(p67)
そのメッセージを信じて読み進めていく。
乗り切った後は少しだけ楽に。
実際にどのように考えて、
時間を使っていくのが良いのか。
第5章からPart 2が始まります。
ここからはリアルな話が主となってくるので、イメージはしやすくなっています。
テーマは「時間を増やす為に、自分に許しを与える事」。
この「許し」が非常に大きなポイント。本書の最後で大きな力をあなたに持たせていきます。
「時間を増殖させる」という一見不自然な表現も、CEO達のインタビューや体験談で再現。
断片的に役に立つであろう話は存在します。それは後ほど。
ただ、何か抜本的な意識改革があったかと問われると、特別に感じられれた概念は残念ながらあまり見当たりません。
どれも噛み砕けば不変の事実であり、心掛けていく事は大切であるにせよ、目新しさには欠けます。
もうひと押し抜本的な何かが欲しかったというのは、私のわがままでしょうか。
実際問題、私はこう言わなければいけない事は非常に辛いです。本が好きなだけに。
ダン・S・ケネディを思い出した。
効率や合理性を考えるならば、彼に勝るものはいない。
彼の書籍はどれも徹底した合理主義ですので、どれかを一度読んでみる事をオススメします。
もしかしたら、お読みのあなたは購入された事はあるかもしれませんね。
本書も後半になるにつれて、良い意味でエゴイスティックになっていく傾向でした。
それが大きなポイントである「許し」の名の下に。
誤解を招く表現かも知れませんが、後編で説明します。
ダメな人間だからではなく、他を気遣うがゆえに。
利己的だからではなく、他の人々のためになることを目指すがゆえに。(p213)
むしろ第8章以降の最後尾に収穫が多かった印象が残りました。
それだけで十分だと考えると、コストパフォーマンスの問題が再燃します。
そして最終評価は。
難しいレビューです。
基本的過ぎる内容である一方で、難解な思考法もありと考えると、ジレンマを感じました。
果たして初心者向けなのか。上級者向けなのか。
基本的な事でしたら、導入編でも紹介した和書も侮れないですね。
無理に本書である必然性も無いように感じます。
最後尾で熱く心を揺さぶられる啓発的な内容があっただけに惜しく思います。
そのような訳で総合★★(2.7)の評価をしました。
あくまでオススメしないスタンスですが、良かった所をレビューさせて下さい。
ここで「時間投資思考」を見たい
時間を増殖させる。
投資して膨らます。
この考えを追及しています。
時間というものは限られたものなので、「膨らます」や「増殖」という表現を不思議に思うでしょう。
言うまでも無いかも知れませんが、実際に膨らむという事ではありません。あくまで思考法です。だからやや抽象的に。
具体例として、こんな話が出て来ました。
少しややこしそうですが、その原理はとても簡単です。
あなた自身のように手慣れた人なら5分でできる仕事を、誰かに少なくとも150分(5分×30)かけて教えるとする。
一度に150分やるのではなく、数か月にわたって合計150分やっても構わない。
(中略)
「もしあなたが、ある仕事を1日5分、1年に250日行うとしましょう。これを分に換算すれば1年当たり1250分になります。
しかし、そうする代わりにその仕事を150分かけて誰かに教え、以後はその人間にやってもらうと決めたとします。そうすればあなたにとって年に1100分の節約になるのです。」(p140)
投資した時間の見返りで、自分の時間が増えていくという考えです。
最初に億劫がっておざなりな事をしてしまうと、かえって後に余計な時間と金銭が発生するといった所ですね。
やるべき時にやるべき事に時間を使い集中する事が、自分の時間を増やす。
だから「アリとキリギリス」。
リッチ・シェフレン氏が似た概念に触れていた。
彼も超原理主義です。
その箇所を要約すると、
外注先を探す時に時間をみっちり取る事は大切な事。
いい加減に選んだり、安いからという理由で選べば、質の悪い仕事に振り回される。
2度手間になる。余計に浪費する事が多い。概ねそんなような事です。
私も経験上、同感です。
本書の言葉を借りると、目先の事ではなく、将来的意義を常に考えるという事に繋がっていきます。
CEO達のリアルな話は良かった。
実際の話には深みがあります。
個人的に印象に残った言葉達です。
私は自分にとっての成功とは『他の人々を幸福にすること』だと考えていたからです。(中略)自分にとっての成功は何かを明確にしていない人々は、『忙しい』状態に絶えず押し戻されていきます。(p71)
夢や目標が定まらない中で生きる事は、自分にとって何が大切で、何が必要かが見極められなくなります。
「私がいる必要のない会議には出席しません」と彼は言う。「優れた判断のできる優秀な社員たちがいます。それを私が監視する必要はありません。私たちのモットーは”知る必要がある人間。いる必要がある人間”というものです。」(p86)
リーダーとしての僕の仕事は、何かを”する”ことではないからです。僕の仕事は、何かを実現する手段を講じることなのです。(p153)
一例ですが、
各人物が極限までに必要事項を追求し、焦点を当て見極めていく思考が浮かび上がります。
時間を増やすも減らすも、個々人の手腕に委ねられるとの結論。
自分のマネジメントが、結果として時間の管理に結びつく。
その思考法のみが解決するというのはやむを得ない現実かもしれません。
目先のものに振り回されない大局的な視点が必要とされていきますね。
そして後編、振り回されないからこそ、シビアでエゴイスティックに徹する事の良さに話が広がっていきます。
「許し」の名の下に。
もうちょっとガチで知っておきたいから後編を見たい
ウルトラスーパー「アリとキリギリス」。
「時間投資思考」を見たい
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「ガチで独創的なレビュー:「時間投資思考」(前編)」への3件のフィードバック
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