あなたは古典が好きですか?
ここを訪れたということは、好きとは言わないまでも興味があると思わせて下さい。
私はと言うと、古典は大好きです。
ですが、学生時代には古文の授業は嫌いでしたので、不思議なものですね。
今となれば自身の書棚に多くの古典が並んでいますが、どれも役立っているものが多いです。ビジネス書としても人生の指南書としても。
特に一番のお気に入りは「平家物語」。
訳あって、英文の洋書も買ったほどです。
さて、そんな中から意外なビジネス書。是非あなたにお伝えしたいものがあります。
「風姿花伝」
以前に買ったこの書籍を今再び引っ張り出して読んでいますが、今回に限らず、何度も引っ張り出したくなる書籍です。
「紅茶花伝」ではありません!
それはコンビニへ直行して下さい!
そんな冗談を言ってはいますが、元々読むに至った理由は私の中では深刻でした。
あなたにも経験があるでしょうか?
仕事でどことなく行き詰まりを感じたこと。
当時の私は感じていました。
自分の表現したい事がキチンと伝わらなく、思ったような評価に繋がらない。
デザインの仕事やフィールドにはよくあることかもしれません。
技術の問題? それとも心の問題?
何が原因だろう。
そんな時にこの本の存在を知りました。いや、思い出したと言った方が正確ですね。
先程のように元来古典文学が好きなのもあり、名前や概要くらいなら予備知識はあったので抵抗無く読むに至りました。
でも何故そこで、よりによって風姿花伝なのか?
その理由と意味をレビューしながらお伝えしていきます。
現代にもジャンルを越えて活かせるヒントが沢山ありました。
Contents
風姿花伝の概要。どんな本か?
簡単に説明します。
能楽論です。
室町時代に能楽(申楽(さるがく))の始祖と言われていた世阿弥が、芸事に対する心構えをまとめ上げたもの。
彼の父は観阿弥。
まず第一に、この申楽の世界を究めようとする者は、能以外のことに心を奪われてはならない。しかしながら、和歌の道だけは、花鳥風月にこと寄せて寿命を延ばすめでたい教養であるので、せいぜいこれを修練するがよい。
いったい、若い頃以来、私が体験してきた能の修行の数々について、その大体をここに書き記すところである。(風姿花伝 序)(p14)
こんな台詞からも身が引き締まる心持ちにさせます。
今では古典の名作と呼ばれている本書も、その存在を知られたのは実は明治時代のことでした。
何故そんな後に?
そこには本書の大きな特徴とも言える理由があります。それは、
秘伝の書だったから。
門外不出の前提で、別に世に知らしめるためのものではなかったことが挙げられます。あくまで彼の子孫に継承する芸事への教科書。
主観にはなりますが、その事実がまた魅力的ですね。
謎めいていて、実に奥ゆかしい。
如何でしょう。
そもそも、申楽の家を守り、申楽の芸を大切に思うがゆえに、亡き父観阿弥の遺言した教えの数々を、心のうちに刻み、そのおおよそを記したのが本書であるが、それは世間の非難を顧みず、能の道が廃れてしまうことを憂えるがあまりに、あえて筆を執ったものであり、まったくもって他人に何かを教えようなどという意図はない。ただわが子孫のために教訓を残すばかりである。(風姿花伝第三 問答条々)(p145)
またそれらの心構えは、時に厳しい芸事へのしつけでもあることから、現代人やビジネスマンも知るに値するプロ意識へと新しい解釈を生み、私たちの目の前に存在するようになりました。
こうして世阿弥家の子孫への秘伝書を、現代人である私たちが読む。
さらにその人たちは芸事とは関係の無い、赤の他人のビジネスマンだったりもする。
こんなことを彼は想像していたでしょうか。もし出来るのならば伝えてみたい。
一方で今度は、日本という家族で考えてみましょうか。
そうすると、何代も過去のあなたのおじいちゃんからの言葉のように感じる面白さもあるかもしれません。
総じて、私たち日本人としてのDNAが騒ぎ出すような感覚にさせます。
ストイックな日常と精神があなたを進化させる。
「私には関係無さそう」
そう思ってしまいましたか?
能楽や芸事にまつわることから、もしかしたら壁を感じてしまう部分もあるかもしれません。
確かに序盤の風姿花伝第一・第二は、具体的な能楽のテクニックや芸の一生に焦点を当てています。
もしもこの年頃までなくならない芸の魅力があったなら、それこそが「本当の花」ということになろう。「本当の花」とは、五十歳近くまでなくならない芸の魅力を備えた役者であれば、四十歳以前に都で名声を博していたにちがいない。(p38)
歴史や能に対する、あなたの興味で評価が上下してしまう現実も否めません。
ですが、並行して語られる本質は普遍的な事柄です。芸事のみならず、日常生活やビジネスにも間違い無く応用出来るもの。
だからこそ先ほどの新しい解釈へと進化し、受け継がれた強さが事実として存在します。一番の証明です。
人に必要とされる本質や倫理は、いつの時代も変わりません。
能は最先端のエンターテイメント。そこにヒントが。
当時(室町時代)は最先端。
ナウかったんだ!
(古っ!)
そして元来は人を楽しませるもの。鑑賞してもらうもの。
本書を読んで気付いていくのは、相手あっての芸であるという世阿弥からのメッセージ。
現代のビジネス書にも通じませんか?
人目にさらして恥ずかしくないような、ストイックなまでの芸に対する心得やこだわり。その一方で、如何にして鑑賞してくれる相手のことを考えるか。喜ばせるか。そしてまた、如何にして環境にも目を配るか等々。
自らも相手も大局的に見て、完成度を高めていく視野の広さの伝授。
ちょっとここで考えてみて下さい。
これらはブランディングやプレゼンテーション、さらにはサービスやマーケティング、そしてコミュニケーション術等へと広く広く派生していくメッセージと言っても過言ではありませんね。
ほぼ時を同じくして、千利休の生んだ茶道にも似たようなメッセージが見え隠れするところから、日本の芸事への意識の高さがうかがえます。
こういった概念が室町時代に体系的に完成されていた事実が何とも脅威です。
また現代人であるあなたや私が、文明や時代の枠を越えて教えられるのは興味深いところです。
同時に本書で、継承されるその意味や理由を悟っていくたびに、言い尽くせない尊敬の念すら芽生えてきます。
「だから、私たちの目の前に残るんだ」と。
日本人としての誇りを目覚めさせていく。
そんなビジネス書。
これまでにそういった書籍に出会ったことはありますか?
売れている本だけが良いわけではないですね。
古典であることから、従来のビジネス書とは異なり、進捗状況やレベルに左右されない良さも感じさせます。
私の所持するものは、現代語訳と原文が書かれているもの。
個人的には、原文の雰囲気も感じ取りたいのでそのようにしました。
難なく読むことが出来るので、心配は要りません。
願わくばそれがオススメ。風姿花伝の良さがより深くわかると思います。
でも、
もし時間が気になるようでしたらこの本。
解説書も非常に充実。
いくらでもあります。
特にこちらが良いですね。
「ビジネス版「風姿花伝」の教え」
重要箇所をピックアップして、完全に現代のビジネスに置き換えて説明。
見開きで一つのテーマがわかるようになっているのでかなりお得です。原文の記載はありません。
著者が能楽師でもあることから、その読みも深いものに仕上がっているとも言えます。
さらには世阿弥への興味がある場合にはこちら。
「世阿弥の世界」
室町時代にこのような芸術を確立させた感性に興味が芽生えます。
この本はビジネス書ではなく、芸術関連の評論です。
個人的な好みではありますが、このような本もあるんだということが伝われば嬉しく思いますので、恐縮ながら紹介させて下さい。
リサーチしてみるとその関連書籍の多さに、恐らく圧倒されるかもしれません。
本書にいつまでも人気があることは言うまでもなく、私自身もこれからもまだ他の書籍に触れていこうとも思っていますね。
「風姿花伝・三道」
角川ソフィア文庫
時代を越えた仕事と人生の極意。ここにあり。
最後に:
ビジネス書としても、人生の指南書としても役立つ本書。
古典の良さも含めて、その味わいが伝わればとレビューしました。役立てて頂ければ光栄に思います。
私たちの生きている世界には様々な文献があります。
このサイトでも紹介しているように沢山の書籍があります。
どれも素晴らしく、むやみに甲乙付けるつもりもありません。
私がそんなことをするまでもないでしょう。
何故ならば一番の答えは、何年経っても淘汰されずに生き残ったかどうかということに他ならないからです。
また生き物であれ、物質であれ、そのようにして生き残ってきたものには言葉を越えた力強さも存在します。
生き残ってきたものから、未来は多くを学ばなければいけません。
生き残ってきた「風姿花伝」・・・。
この書籍が存在することは、日本人としての誇りです。
時代を越えた仕事と人生の極意。ここにあり。
「風姿花伝」を見たい
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「最近は「風姿花伝」をビジネス書として再び読み始めた。仕事や人生の極意・名言がこんな感じ。」への7件のフィードバック
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