あなたには冷酷さが足りていますか?
社長の威厳に満ちていますか?
ちょっと想像してみて下さい。
社長業としての日常を。
もしそれらの質問に少しでもNoとなる場合には、本書の内容は知っておいても損にはなりません。間違い無く。
そんなスタンスの本です。
本書の導入編では、やはりその冷酷さから触れました。
一言、容赦が無い。
だから帯にはこのように。
この本には、温情もないかわりにブレもない。
ついでに学問的な理屈もない。
あるのは、現場最前線からの筋金入りの戦略だけだ。
ダン・S・ケネディ氏の著作は、えてしてどれもこのような感じです。
既に何かを読んだことのある方にはうなずけて、初めて読む方には必要となるフレーズでしょう。
そんな中でも、特に本書は彼の思想の全てをぶちまけたような本で、良くも悪くも密度の濃さを感じさせます。
超原理主義。
超合理主義。
それもこれも利益のため。
まずは倫理にがんじがらめになることをやめてからいってみましょうか!
Contents
本書の概要と評価。
「ダン・S・ケネディの
世界一シビアな「社長力」養成講座」
ダイレクト出版
涙も情けも、稼ぐためには捨ててみようか。ちょっとだけ。
総合評価★★★(3.7)
(理由は概要にて記述)
私事で恐縮ですが、ダイレクト出版との出会いは本書でした。
インパクトのあるタイトルに目が止まり、どんな講座なのだろうという素朴な疑問から始まったと記憶しています。どこかのサイトの広告でしたね。
そもそも何故目に止まったのか?
それは私も事業を行っているからです。社長になって日も浅く、学びたい一心でした。
あなたもそうですか?
いざ本書を読み進めていくと、ズバズバと刺激的な発言の数々。
ですが、彼のメッセージはクレバーで正論。
正論過ぎて、ついていける人がいるかどうかと思わせることもしばしばです。
でも未来のためにはついて行きましょう!
「社長力」養成講座は意訳。
原題は
Ruthless Management of People & Profits
つまり
人と利益にまつわる非情なマネジメント(経営)
ですね。かつて導入編でも触れました。
全体を通して、社長への難しい数字・経営の話なのではなく、ほぼ人に関するシンプルな話。
社長とは何か?
社長であるためにはどうするのか?
そして、働かせる・稼がせるにはどうするのか?
もしあなたが怒りっぽくてユーモアを解さないタイプなら、この本は読まないほうがいいかもしれない。(p4)
運営していくのに必要な兵法書の趣です。文字オンリー。
そして論理そのものは実に単純明快で、綺麗事は一切無し。
問題の解決は大衆に迎合する代わりに真実を告げることから始めなければならない。(p48)
不都合な真実を交えながら私たちを鍛えてくれるのです。
誰もがいつかは役に立たなくなる。あなたも例外ではない。役に立たなくなった者は、放逐されなければならない。それがたとえ自分自身だったとしても。(p63)
基本路線は性悪説。
人は悪い奴だ!
従業員は敵だ!
盗み、サボり当たり前!
経営者は孤独が当たり前で、従業員を信じてはいけない!
!!!
読み進めると、これらが横たわっているのに気付かされるでしょう。
洋書とはいえ、人間の根本はどこでも同じなせいかそれほど違和感も感じさせません。
賛否はあると予想されますが、ダン氏の言いたいことも私としてはわかります。
良い顔ばかりも出来ない、ということもありませんか?
また、そんな顔をしてきたからこそ苦しまされた現実。
一方で理性を保ちながら読まないと、身も心も本書の思想に染まってしまいそうです。筋金の入った性悪説が続いていくのです。
雇い主と従業員の関係が本質的に「敵対的」なものであることを認めたがる人はまずいない。
しかし、それは事実だ。なぜなら、あなたにとっての最重要事項と彼らのそれとはそもそも相反しているからだ。(p27)
個人的には敵対からは何も生まれないと思っていますが、だからと言って、おめでたい考えや夢のような考えも時には戒めないといけません。
この根底には、
「会社の利益を守るため」
という社長にとっての思惑があります。それは巡り巡って従業員の給料や顧客のため。
だからこそこのようにして性悪説を貫かなければならない現実。
ページを進める度に、現実を深く考え見つめ続ける覚悟と共に、常にバランス感覚を試されていくようです。
淡々と続いていく、
社長に必要な47の項目。
その内訳は?
社長に必要な47の項目。
その内訳は?
前半のPART1、それと後半のPART2に大きく分けられたシンプルな構成。
その中には全部で47項目。それもさらに細かく。本文中の超重要箇所は太字で。
だから、ページ数も多く分厚いタイプの書籍ですが、気付けば沢山読み進めているでしょう。
ざっと取り上げられているテーマはこんな感じです。
- 雇用
- 人材管理
- 職場作り
- リーダーシップ
- 利益
- 組織力
社長業にとってはどれも欠かせないもので、必ず悩まされるものではありませんか?
全体的にかゆい所に手が届くような気持ちにさせる編集は、さすがといったところでしょうか。
基本的にはダン氏の執筆ですが、ごくわずかながら異なる人物の協力が見られます。気付かないほどです。
どの執筆者も、経営の原理を重んじ、人を惑わす感情が無くドライです。
そうして従業員も正していくのです。
ここで、ドライという言葉が出たので余談です。
あなたは「法」という漢字の由来を知っていますか?
水を表す「さんずい」に、「去る」と書きますね。
この場合、「さんずい(水)」は潤った感情を表します。それが去る状態、つまり水や潤いが無い状態を意味します。
ということは、「法」は感情が無くドライなものを指すということです。
「善意の独裁者」。
これは個人的に感銘を受けた言葉です。
さて、後半では敵対の概念も弱まり、舞台が対外的な社会へと広がっていきます。顧客や株主に対しての話も。
加えてマーケティングやクチコミ、そして企業のビジョン。
そういった一企業としてぶつかる問題にも斬り込んでいきます。最後まで淡々とシビアに続くのは変わりません。
それらの対処法に触れていく中で、心なしか前半とくらべたら、ダン氏が私たちの味方になっていくような。
ビジネスオーナーたるあなたは、来る日も来る日も自らをリスクにさらしている。あなたの行動を批判する人間はリスクをまったく冒していない。(p283)
啓発的な台詞も多くなっていき、強く励まされていきます。ことあるごとに、あなたはそれでいいのだ!と。
ダン氏のシビアさの陰で、ある種の器を感じてしまうのは私だけではないはずです。
また彼から多くの書籍が紹介されていくのが特徴で、その中から探してみるのも面白いかと思いますよ。
頻繁に出てくるトランプ氏の企業家時代のエピソードが興味深いです。
そして最終評価は。
巷では、あまり評価は高くありません。
もっとも著者本人も言っていますが、賛否両論は想定内です。
ただ私自身の経験からも痛感していますが、原理に基づいてとても大切なことが書かれています。
一方で、評価が分かれるのもわかるので、2つの側面から判断させて下さい。
あなたはどちらでしょうか。
- もしあなたが、スタッフや部下に振り回されがちな優しいタイプの方や、いまいちシビアに徹し切れない方である場合。
ダン氏が支えて励まし、覚醒させるので★★★★(4.8)
ただ注意して下さい。
★5つにしないのには理由があります。
それは、そのようなあなたがいきなり影響を受け過ぎても危険な所です。
シビアに徹するリスクへの対処法やマインドも、同時にトレーニングしておかねばなりません。
実際に、徹し切れないまま実行してしまいオロオロする・・・そんなタイプの上司や社長も見てきたのでそう感じてしまいました。
腹の据わったマインドが必要ですね。 - もしあなたがそういった人物ではない場合。
無理して買う必要は無いので★★(2.5)
ただ、徹し方が勉強にはなり、より良い理論武装になる可能性もあります。なので、行き詰った時に再確認するのも悪くはありません。
そのような訳で総合★★★(3.7)の評価にしました。
特に印象に残った重要な部分を読み解いてレビューしていこうと思います。
ここで「ダン・S・ケネディの世界一シビアな「社長力」養成講座」を見たい
(ダイレクト出版へはこのリンクから)
雇用を誤解していませんか?
雇用とは何か?
何のためにするものなのか?
どう思いますか?
私が本書を何度読んでも印象に残るのが、雇用の箇所です。その次が人材管理でしょうか。
序盤に出て来ますが、そのインパクトは相変わらず大きいですね。
そして先ほどの雇用に対する答えは?
従業員を雇う唯一の理由は、彼を雇うことによって雇うことによるコストの何倍かの利益を上げることができるということなのだ。(p44)
序盤の敵対に続き、雇い主と従業員の本質をズバリ。
綺麗事へと真っ向からバシっっ。
例えば、雇用は義理や保証ではない、と。
そんな社会貢献ではなく、あくまで利益を生んでもらうためのもの。
人件費は経営者から見れば人への投資です!
だからリターンが必要!
ビジネスは軍事作戦を見習う必要がある。つまり従業員と取引業者に対し、「結果がすべて、弁解は無用」という軍隊並みの責任と義務を求めるということだ。
(中略)
「弁解無用」の方針は、従業員に限らずどんな関係者に対しても最初にはっきり示す必要がある。(p79)
ただ、私なりに付け加えることが許されるのならば、こう言わせて下さい。
世の雇用を増やして保証するという大義自体が悪い訳ではなく、最初からそこを考えるのは違うよということですね。
増やそうとする社会貢献も、あくまで利益の目算があっての話です。
慈善事業とはき違えてしまうと自らの首を絞めることにもなり、共倒れに。
利益を生むサイクルが無ければ貢献にもならず、誰も幸せになりません。
※参考記事
常にキッパリと一線。
冷たいようですが、そんな厳しい雇用や人材管理こそが巡り巡って皆のためになると強く教えてくれます。
そこで、効率の良い雇い方のアイデアが多いのも嬉しく感じさせますよ。
これは必見。
かの有名な「壊れ窓理論」に行き着く。
全てにおいて強迫観念かと突っ込みたくなるほどの性悪説。
これまでの内容は、サボり、泥棒、恩知らず、不誠実は絶対ある・・・そんなオンパレードです。
経営をするあなたには身につまされる事柄の数々。
だからこそ生まれる厳しさ。
ところでこの一連の原因はアメリカで提唱された「壊れ窓理論」というのがあるからです。
前半の締めとしてPART1の最後に登場。
本書でダン氏もこの本を持ち出して力説。
ご存知ない方のために簡単に説明しますと、1つの壊れ窓があるだけで風紀が乱れていくという考えです。つまり一つのほころびが多大な損害になっていくということですね。
よく吟味せずに口に出された言葉。無愛想で失礼な受け答え。長く待たせすぎること、遅刻すること。これらによっても「二流」の烙印が押されてしまう。どんな窓も1枚の壊れ窓にはかなわない。(p144)
壊れ窓を放置すると会社はダメになります。だから厳格に。
成功企業は基準作りが上手い。
ですが、その理論にも注意が必要です。
行き過ぎて完璧主義にでもなれば「思考停止」を招くとダン氏は懸念しています。
あれほど強調したのに?
読みながらそう思うかもしれませんね。
思考停止になれば、形骸化したり見当違いになっていくので、逆にコストが掛かるのです。
そこでPART1の総括。
最も重要なことは最良の基準を作ること。
あなたが何を許して何を許さないか。それは感情ではなく、コストとリスクとにらめっこ。
成功企業は、基準を導き出し、その基準を満足させるための複雑な基盤を確立している。彼らは、確立した基準をわざわざ「超え」ようとはしない。この基準というプリズムを通して、これら大成功している企業を検証・分析してみれば、いかに私の言っていることが正しいかがわかるだろう。(p156)
ハッキリさせることはお互いにとって良い。
社長として毅然とした言葉。徹する思想。
そのためのバックボーン。
本書からの言葉は、シビアさへの心の支えに。
どんな孤独な戦いにも打ち勝つ理論武装。
逆ギレやパワハラと騒がれても、常に筋の通った理論の用意。
そこには怖いものはありません。力がみなぎっています。
あなたは冷徹でいいのです。会社のため、皆のために。
そして自己へも厳しく。ストイックで仕事の鬼となり、鋭い視点も忘れず。
通常のリーダーや経営者がどうするかなどは気にしなくていいのです。
周囲の過半数の人々のやり方を見て、その反対のことをすることだ。-なぜなら人々の過半数は常に間違っているからだ。(p72)
合っていようが間違っていようが、得るメリットも被るデメリットも、背負うのは経営する立場のあなた。そしてメリットは還元していくのです。
権限もある代わりに責任もある。
これらを信じ、声高に言えるかどうかのメンタルにかかっていると本書で学ばされていきます。
社員は最大の資産であり、最大の重荷でもある。失敗と成功を大きく分けるのは、あなたと同じ船に乗り、あなたの思い描く目標に向かい、あなたのビジョンを理解し、全力でその目標に汗と情熱を傾け、ほかの社員たちを引っ張っていく社員がいるかどうかだ。(p163)
PART1だけでもお腹一杯。
完全に本書に抱く印象も固まっていますが、後半は少しだけこの印象が変わる箇所も出てくるのです。
その違った一面をちょっと見せるための後編へ。
もうちょっとガチで知っておきたいから後編を見たい
涙も情けも、稼ぐためには捨ててみようか。ちょっとだけ。
「ダン・S・ケネディの世界一シビアな「社長力」養成講座」を見たい
(ダイレクト出版へはこのリンクから)
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「ガチで独創的なレビュー:「ダン・S・ケネディの世界一シビアな「社長力」養成講座」(前編)」への8件のフィードバック
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