ここまでお読み下さり有難うございます。
前編からの続きです。
2分でわかるガチな概要は前編で。
総合評価★★★★(4.6)
(理由は前編の概要にて記述)
教える事に責任を持っていますか?
落合氏からそんな問い掛けをされるような指導論。
指導する側・される側にも一貫して自立心を求めています。
自分で考え決める事の厳しさと大切さ。
解説者時代に書かれたこの方法論の驚く所は、内容の良し悪しよりも、監督時代に自らが実践した所です。
その事実が、本書の魅力をまた更に持たせているような気にさせます。
あくまで本書執筆時点では理想論の傾向である事は否めません。
ですが、今となればそんな事実も鑑みながら、時代を越えたと言っても良い指導論の数々。
それらは部下に対してどうすべきか悩める指導者に安堵感を与えると言っても過言ではありません。
同時に奮い立たせられます。
前編ではそんな解説者時代である面白さと彼の理想に焦点を当ててレビューしました。
もしあなたが本気で知りたいという場合、ここからお読みでしたら、
まずはより良い伝達の為に前編の概要を読む事をオススメします。
というか、いきなり後編を読んでもあなたのお役に立てないのです。
指導論からあなたへの啓発へ。
これまでの前半では指導する側からの話が展開されていました。
中盤以降では、組織の中での自分の在り方、そして叱咤激励とも取れる自己啓発の要素が強くなる話。
そう移り変わっていくのに気付かされるでしょう。
その組織に存在するにも、彼の基本概念である自立心は欠かせません。
指導する側であってもどのように組織の中で機能していくのかは、落合氏特有の考えがあります。
機能する指導者として必要とされる資質、それは、
Contents
説明出来る人間である事。
彼の野球人生が、既にそのまま物語っている。
それを「野球の常識だ」とだけ言われたら、選手は納得できるだろうか。(p78)
常日頃から、どんな些細な事にも真面目に向かい合ってきた彼らしい言葉です。
前編で原理を教える事の重要性について触れましたが、キチンと考えてきた事は上司や教える側の畏敬へと変わっていくのではないでしょうか。
人が気付かないような視点に気付いていける洞察力や疑問は、魅力の一つになるかもしれません。
たとえ、一見理解されないようでも。
では、その為にはどうすれば良いのか?
学ぶしかない。
私はそう思っています。
部下にそう思われないためにも、管理職になったら、自分が第一線で働いていた時よりも、さらにオールマイティーにならなければいけない。(p131)
物事の核心や原理に触れる事はやがて自信となり、わからない事や未知のものに出くわしても動じない自分でいられる。
本書から感じるその利点は、私も日常で実感する事があります。
わからないことは「わからない」と言う。ただし、それまでの経験からわかっているところまでは教えてやる。部下とはそういったコミュニケーションを取りたい。(p119)
このようにして自立心が、自ら学ぶ気持ちや謙虚さへと連鎖していく流れは一貫していて、無駄を感じません。
“自分を活かすこと”と”自分のやりたいようにやること”は、まったく意味が違うのだ。組織のルールを守り、指揮官が目指す方向に進みながら自分の力を惜しみなく発揮する ーこれが組織の中で自分を生かす最良の術である。(p144)
あなたの周りに指導者は沢山。
居ますか?
後半に進むにつれて、自己管理や自己鍛錬の内容。
指導論とは話が離れていくのでどうなるのだろうと感じていた事は正直に言おうと思います。
それに対して、同時に感じていた事がありました。
先程の「学ぶのも指導者」という表現を使いました。
総括すると、
まず自分が最高の自分でいる為に学ぶ事が、最高の指導が出来る人材になるという事ではないでしょうか。
その為には、社会生活をしていく上で、どんな職種のどんな人でも、自分が吸収したいものがあったら貪欲に取り組んで学んでいく。
なぜ、自分の指導者を限定する必要があるのか。手本になる人の仕事や行動は、貪欲に吸収するべきだろう。(p166)
人はいつでも指導する側にもされる側にもシフトする。
そして横の繋がりを持つ思考。
分け隔てなく吸収する知性に行き着く。そんな事を本書から考えさせられます。
落合氏はバッティングキャッチャーも先生にした。
打撃練習を終えた私は、ケージを出る前に決まってバッティング・キャッチャーにこう話しかけた。
「俺にいつもと変わったところはなかった? 遠慮しないで言ってくれ」
すると、時には「いや、いつもより迫力がないというか・・・・・・」とか「バットのグリップが、ほんの少しですが下がっているようです」などと、雰囲気から技術的なことに至るまで、実に的確に、かつ明快に教えてくれるのだ。(p168)
一例で、次作の「采配」と被る部分でもありますが、
現役時代の彼のバッティング練習時の会話の一コマ。
裏方のスタッフにも度々アドバイスを求めたようです。
自分の及ばない部分や考えが見えている人の見極め、
また教えを乞う事に対する貪欲さと謙虚さがにじみ出ているのが見えるかと思います。
こうなる心理の一番大きな特徴は、
「下らないプライドは持たない」事ですね。
そしてまた、自身の中で何が大切かを冷静に理解し、目的が定まっていてブレがない事の表れだと感じています。
一貫して自立心を謳ってきた本書でした。
その軸と並行するように、自らの殻を打ち破り、捨てるべきものは捨てる論理。
それも自立心に結びつく結論に至るように感じます。
今のあなたは、捨てるべきものを捨てられていますか?
私も戒める毎日ですが、
捨てるべきものを捨られる心の余裕と人生は楽しくなると信じています。
ここで、ちょっと立ち読み。
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まとめ。
落合氏からの自己啓発書。
指導論だけで終わるのかと思いきや、仕事への心構えや思考法など、盛り沢山な所に驚きました。
特に最後の最後の激励には心を揺り動かされます。
野球に関する内容は過去からのものが大半で、次作「采配」を先に読んだ私としては物足りなさはありました。
野球を離れている状況で書いたのだなと。
しかし、現役時代の激闘から離れた中での達観した思想。
そこには仙人のような透き通った眼差しが想像出来るようです。
闘いの合間の休息とも言っていいでしょう。
そういう時代だからこそ見える事、想う事があるのも人間です。
両書を比較すると、野球の密度や濃さは違いますね。
でも、だからこそ本書は幅広い話や、社会人に向けたような啓発本に落ち着く事が出来たのでしょう。
野球人としての彼よりも、一社会人としての彼を見れらような気がしています。
もしくは(野球の部分を除けば)一経営者の本を読んでいるような錯覚も。
その格言の数々は、そのような方達にも引けを取りません。
もしあなたが彼の指導法や、どのような思考で自己を鍛錬したのかの好奇心をお持ちなら、読んで損は無いと伝えたいです。
指導する事は誰の為?名指導者へのパスポート。
最後に:
この本の3年後に中日の監督に就任。
本書の中の多くの願望が叶えられていった事を想うと、ある種のサクセスストーリーの序章です。
彼にしては珍しくも思える
「○○でありたい」
「○○をしたい」
といった健気(?)な表現達。前編でも概要で触れました。
加えて、自分だったらこんなシステムでチーム作りをしたいという構想も。
もう一つの見方をすれば、後の監督8年間の青写真にも見えてきます。
そう思うと、底知れぬ面白さを持った本。
更には不思議な感覚に陥らせる本と言わせて下さい。
かつてこんな心境にさせる本があっただろうかと、今思い出しています。
予言とまで言うと大袈裟ですが、考えや時間の変遷を楽しんでみても面白いのではないのでしょうか。
監督時代の事実と照らし合わせながら。今だからこそ見えるものがあると。
そして、
穏やかな浪人の身から、再び激戦区の名将にのし上がった青写真として。
底辺も頂点も見た彼らしい人生の一かけらです。
指導する事は誰の為?名指導者へのパスポート。
「ガチで独創的なレビュー:「コーチング 言葉と信念の魔術 落合博満」(後編)」への1件のフィードバック
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