「書く」人は必読。
「書きたい」人も必読。
「書かねばならない」人も必読。
あなたはそのどれかに当てはまりますか?
そのどれかに当てはまったら、次にお伝えしなければならない本書の特徴があります。
それは書く力を上げる為のトレーニングの本ではないという事です。
ん?
疑問に思うかもしれません。続けます。
書く力を授けてくれる本とか、どのようにすれば10枚を書くテクニックを身に付けられるのか。
更には、文章が上手くなる奥義があるのかとか。
その期待は良い意味で裏切ってくれたと、まずは言わせて下さい。
真意はもっと違う所にあった骨太の印象を抱いた本でした。
同時に先程の期待をして、求めている人には相応しい本ではありません。
一言で言えば上達に向かう為のライティング論です。書くという行為の基本について考えさせられます。
本書は、だれでもが書くことによって、思考力が鍛えられ、自分なりの視点を持つことができるようになることを目指している。(p49)
冒頭の状況に当てはまり、尚且つ基本的な考えから学びたい場合に限り、読む人を選びません。
Contents
本書の概要と評価。
「原稿用紙10枚を書く力」
大和書房
書ける力は、生きる力。そして生き残る力。
総合評価★★★★★(5.0)
(理由は概要にて記述)
随分と昔に購入した本だと記憶しています。
今ではコピーライティング等の言葉も知ってはいますが、そんな言葉も知らず、ただ書く事を一社会人として一から学ぼうと思い手に。
最初は初心者向けの手引書かなと思っていた事は否定しません。
ところが読み進めていくと、そのような手法に関する本ではありませんでした。
書くという行為はそもそも何なのかとの考えから展開。
そこに驚きがあり、根底から考えさせるだけの骨太さを感じました。
上手くなる為には、そして書けるようになる為には、考え方から入る事が非常に大切。
ではその考え方とは?
そこをレビューしていきます。
原稿用紙10枚を怖がっていますか?
この枚数は著者の齋藤孝氏が定める基準です。
私は、書くことにおいては、原稿用紙十枚という長さを書けるかどうかが分岐点だと思っている。そして原稿用紙十枚を怖がらない人を「文章が書ける人」と定義している。(p14)
4000文字という計算になりますが、あなたにとっては如何ですか?
この数字をクリアする為に必要な事は第一に「量をこなす事」。
冒頭ではその量のこなし方をスポーツに例えて教えてくれています。
この部分は著者が子供にも教えているという事もあり、子供から大人まで理解しやすい内容です。
最終的には構築力・構成力というものが避けては通れないものですが、最初は気にしない考え方を推奨。
その考え方から始めると、「私にも出来そう」という気持ちにさせてくれますね。一歩一歩です。
欲は、できたという自信と経験から生まれるものだ。(p31)
そもそも「文章」って何だろう?
そしてまた、「書く」って何だろう?
この本の醍醐味とも言えるのがこの部分。
一見単純な疑問に深い考察と洞察が盛り込まれていきます。
個人的にはそこが気に入っていますね。
何故ならば、普段私達が見過ごしていそうな事柄を気付かせてくれたからです。
それを知る事で、書く行為への視点や見聞が広まったと言っても過言ではありません。
自分と正面から向き合って、人ははじめて文章を書ける。書くことによって、自分の意識の中を深く通過しているのだ。(p61)
同時にそこには書く行為を侮ってはいけないとの戒めも。
軽く捉えてしまう事でのリスクにも言及。知らずにいる事の怖さも・失敗もあります。
こういった所が、本書がただのテクニックの本ではない底の深さを感じさせる一要素です。
ただ、逆に文章力向上の具体的なテクニックを期待する人には物足りないかも知れませんが、そのテクニックも、これらの考え方が出来て初めて功を奏するのではないかとの印象を持たせますね。
書く行為は、話す行為に比べて、自分がいまやっていることが何かを振り返り、確認しながら進められる。目に見える形でそこに文章が残っていく。それが音声言語にはない、文章というもののよさでもある。(p67)
あなたにとって書くという行為は何ですか?
どのように捉えていますか?
考えた事がありますか?
気になる全体の流れは。
大きく3つに分類。
書く事で考える力を鍛え、文を構築する方法を考え、どのような文体にするのかの流れ。
これだけを見ると当たり前のように聞こえてしまうかもしれませんが、これらの中に文章が上達する為の道しるべが多く含まれて、脳内でいろいろな事が繋がっていく感覚を覚えさせます。
これが目的でしょうか。
前半で、書くという行為に執拗なまでの定義付けが繰り返されるのが、やや見受けられます。
ただ、個人的にはそこに新たな気付きがあった事を伝えさせて下さい。
またドストエフスキーの名作「罪と罰」や夏目漱石の「坊ちゃん」等の著作からの引用も多く見受けられます。
こういった部分は文章の分析書という意味合いも持たせますね。
この分析書というイメージはあなたにとって如何ですか?
良い文章に触れる事も上達の条件。
そして最終評価は。
冒頭でも触れましたが、骨太な内容です。
書く事を行ってきた私にもそう感じさせます。まだまだだなと多くの発見も。
具体的な手法やテクニックよりも精神論や心構えといった要素は強いですが、的を得た考察・洞察と、活かせれば上達に近付いていける可能性を感じさせます。
この世にあるどんな文章に相対するにも適用可能と言い切れる原理です。
また、その為に初心者から慣れている人にまで学びがあります。
そのような訳で総合★★★★★(5.0)の評価をしました。
ただ、トレーニングブックと見てしまうと失敗します。今後自らが活かしていけるライティング論と言わせて下さい。
その上でのこの評価です。
書く事を知りたい・考えたい人にはオススメです。
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書く事の大きな誤解のいくつか。
あなたはこう思っている部分はありませんか?
書く事と話す事にそれほど大きな差は無いと。
話す事の上手い人は書く事も上手いと。
万一そう思っている節がありましたら注意して下さい。
著者は昨今の文章のあり方に警鐘を鳴らしています。
パソコンやメールで誰もが手軽に文章を書けるようになった事には拍手を送りながらも、文章はあくまで活字として残るもの。話し言葉は流れて消えていくもの。
そこにはどんな違いと意味があるのか?
話し言葉のニュアンスは、書き言葉ではよほどうまく表現しないかぎり伝わらない。それが書き言葉 ー 文字の怖さである。(p38)
著者は書く事を公共性のあるものとまとめています。
書く時には的確に広く伝わるように、公共の意識を持つ事。
例えば、あなたはメールなどで失敗した事はありませんか?
私はあります。
たいていその時は、話す事と書く事がそっくりそのままになってしまっていたなと思い出されます。
両者が思い描く状況と背景は違うものですね。
そんな事からもわかるように、この考えがどう役に立つのかは、全てにおいて伝える事の上達。
書かれた文字は、書かれたときの状況も知らない人たちが、後でどう読むかわからないのだ。(中略)両者の違いをはっきりと意識しなければ、書く力はけっして向上しない。(p42)
コピーライティングの世界では、イメージを言葉にせよと言われます。
本書の論理は、誰もが想像出来る画像を活字によって用意していく事に共通しています。如何にイメージさせるかが文章の上手下手かの分かれ道になりそうです。
具体的な解決として、
「書き言葉で話す」。
相手とイメージを共有していく作業ですね。独りよがりにならないように。
※イメージと活字の関係はこちらの教材でも触れられています。とても大事な概念。
更にこの公共の意識が発展すると、
価値を下げる事はしない。
書く事は価値の創造。
インターネットの世界の誹謗中傷や批評家の例を取り上げ、こう語っています。
書くことは、価値を下げるのではなく、価値を見出すための行為であることをぜひ認識してほしい。(p66)
公共のものであるという意識を続けて、誰にでも伝わる意味と価値に焦点を当てていく。
あなたが生み出す文章には価値と意味がありますかとの問い掛けをされているようです。
書くという事は活字として残るものと先程表現しましたが、そうであるからこそ、考えて創造する事の重要性を取り上げています。
文章を書く力がつくことは、内容のある話ができるようになることでもある。なぜなら、それは考える力がつくからだ。(p57)
言いたい事を伝えるだけでなく、意味を自身で噛み砕いて伝える事。
言葉に対する思慮深さが芽生えていくような感覚になるでしょう。
これらは日常のコミュニケーションにも活かし得る原理のようにも思われます。
創造の出来る、替えの利かない人が生き残るとも。
その考える力から読む力も伸ばせるうまみ。
書く気持ちで読む事が、読書力を上げる。
実は本書は読み方のテクニックに触れています。ここには驚きを感じます。
中盤はほぼ読書術。勿論書く事に結び付けるのは忘れてはいません。
書く力は、読書力と深い関係がある。書く力がない人は、たいてい読む力もない。(p1)
元々著者のこの考えもあり、読む事と書く事の因果関係を展開。どちらも欠かせないものだと。
また、読書というとインプットの方に目が行きがちですが、アウトプットを最終目的とすると、より効率的な本の読み方が出来ると続きます。
※こちらにその手法に関する記事があります。ご参考下さい。
その効率的な読書法をここで伝授。
私は似たような意識で取り入れています。
主観では、本書の読書法のテーマは攻めの読書。
情報収集と割り切る。キーワードの抽出。
如何にして情報を取り出すかに徹底してクローズアップしたそのやり方は、もしあなたが読むのを速くしたい場合に有益です。
ただ、この辺りは資料を読んでの論文作成や、感想文・レビューを主とした話なのかもしれません。
そこで一番の著者のオススメは「引用」。
抽出や引用に共通するのは、あなたの心に気付きを与えてくれているかいないか。そして、心へ何か引っ掛かりがあるかないか。
これらが大切にするべきあなただけの視点と情報。更には血や肉に。
理路整然と丁寧な語り口に安心感を覚え、ページを進めるのが自然と早くなっていきます。
そのまま後編へと突入。
もうちょっとガチで知っておきたいから後編を見たい
書ける力は、生きる力。そして生き残る力。
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「ガチで独創的なレビュー:「原稿用紙10枚を書く力」(前編)」への11件のフィードバック
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