ガチで独創的なレビュー:「STARの法則」(前編)



これは会社や事業に投資をするための本か?

冒頭でいきなり投資の話。

にもかかわらず、私はベットフェア(企業名)に150万ポンド(2億1000万円)を喜んで投資した。(p2)


株主にでもなって儲ける話か?
どうやら読んでいくとそんな内容でもないらしい。

なかなかに表現するのが難しい印象。
その難しさの理由を考えると、どのような立場で読むべきかがわかりづらいからだと感じさせます。

起業に投資する立場で読むのか?
投資される側(起業する人)の立場で読むのか?
起業家に雇われている立場で読むのか?

頻繁に入れ替わります。何の前触れもなく。

最初に一つだけ言うことが許されるのならば、起業や投資にモチベーションが無いと無意味な書籍になると言わざるを得ません。

本書の導入編では、やはり多くの捉え方から触れました。



そんないろいろな立場の中心にあるのがスタービジネスの概念。

そのスタービジネスを取り巻く人達へのメッセージ。
そう考えましょうか。
そして本書同様、立場に注意しながらのレビューです。

では、そもそもスタービジネスとは何か?
一大テーマであるその話から本書は始まっていきます。

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本書の概要と評価。

スタービジネスとは?


スターベンチャーという表現も出て来ますが、注釈で2つは同じ事と書かれています。
スターと言うからには、ピカリと輝きのあるビジネス。

何かイメージ出来ますか?

その光を演出するものは次の2つ。
あなたが輝くことの出来る重要な要素。



隙間(ニッチ)市場を牽引するリーダーである。
そのニッチ市場の成長速度が少なくとも年10%のスピードである。(p21)


そしてその土台として著者が必要と断言するのが優れたポジショニング。
本書はニッチ市場を探すためのポジショニングの本。それを成し遂げたものがスタービジネス。

おさらいしよう。あなたを成功に導くのは?
ポジショニング、そしてスタービジネスだ。勝率を上げるという観点からすれば、他の要素はまったく重要でない。(p19)


つまりこういうことです。
競合がひしめく中で、争いに興じていたり埋もれてしまう立場を取るポジショニングを取るのではなく、半ば独占となるような世界を見つけ出すこと。

もしあなたがそういう市場を見付けた場合、自ずと引っ張っていく立場となり、成長の可能性も高い。

ここで投資する側からの視点で見ると、表向きでは計画や資金繰りが乏しくても、その可能性を原石と考え投資する旨のことに触れています。
本書のスタービジネスの定義に当てはまるものは光る原石。著者も目を掛けています。



人間関係も似たようなところがありませんか?
独特で個性が光るものに可能性を感じて、ファンとなり目を掛け、ある意味投資をしていくというところに。

序盤はそのように、スタービジネス・スターベンチャーの定義、そして見つけ方。
これを起業する人としても、手を貸して投資する人としても、そういう所で働きたい人にも、知っておくと便利な視点となっていきます。
 

例えば、このように突然立場が変わる。


冒頭で触れた、誰に向けて書いたのかがわからない原因。
覚えていますか?

将来的に価値のある会社にしようと思ったら、今のサイズや利益率はどうであれ、成長著しいニッチ市場でリーダーになればいい。(p29)


具体的にこれは起業を考える人への発言であることがおわかり頂けるかと思います。
それまではやや投資家への話が続いているようにも思えていましたが、突然変換。

と思っていたら、

スターは希少だ。とはいえ、(中略)知識を持って賢く探せば、スターは見つかる。(p31)


これは投資家への発言。更には、

スターが富の源泉だ。富の源泉にこそ投資すべきであり、そこで働くべきだ。(p45)


起業する側がそっちのけに。

スタービジネスの解説として、それを取り囲む様々な立場の様々な角度から見ていると取ることも出来ます。
ではどんな人が読むべきかとなると、スタービジネスを知りたい人かSTARの法則を知りたい人という曖昧で抽象的な表現をせざるを得ません。

それらのキーワードをいきなり言われて知りたいと思いますか?



リチャード・コッチ氏の本がただ読みたいという人なら、という書籍なのかもしれません。

スタービジネスそのものには本書から魅力を感じられるだけに、ターゲットがハッキリしないのは惜しく思わされます。


ニッチ市場の強調と見付ける視点の育成。


序盤を過ぎると、著者が体験した実話を交えながら、スターになるためのポジショニングの話へ。

彼らは最適な時に最適な場所にいるから、奇跡を起こせる。(p68)


その実話の一部は、かつてのTV番組「マネーの虎」を思い出させます。
投資家と起業家のシビアなやり取り。
スタービジネスへの道の険しさを垣間見ることになるかもしれません。

「君たちはこのコンセプトの実現を熱望しているみたいだし、質問には明確な答えが返ってきた。」と私は結論づけた。「でも、何年も計画してきたことなんだろう。どうして、これまでは始めなかったんだい?」
「誰も資金面で援助してくれないんだ」(p75)





ドキュメンタリーのように続いていくスタービジネスの裏側、そして栄枯盛衰。
どのように誕生させ、発展させるかのみならず、落ちたものを復活させる話の数々には身につまされるものがあります。

ここは完全に投資をする人か、起業する人向けの内容。
若干経済の話や儲けの話として、難解な数字も出て来ます。

ですが、著者の言わんとしていることは、それらの数字よりも、ニッチ市場でリーダーであることの徹底。
そう感じさせます。



ひたすらに人と同じことをするなとの文言が、形を変えて現れるところに励ましが。
私達は独自に生きていかねばなりませんね。
人生もポジショニング。

実際のポジショニング戦略。


スターへの7つのステップと、新カテゴリーを作るための32のトリガー。
分量が圧倒されます。

スターに向けて、考えるべきこととやるべきこと。
多くの視点を与えてくれます。

ニッチな部分を探すところから話が始まることを考えると、これから起業する人のためのようにも見えますが、今やっている人にも発想を促す視点の数々です。

後半はやっと起業家精神に基づいてゆっくり読める印象に。
途中の章で「偽のスター」という別の立場からの内容も出て来ますが、周囲の人が起業するあなたのどこを見て判断するのかを知るには役立つかもしれません。

そして最終評価は。


結局、STARの法則って何?

そう思いながら読んでいくと、誰もやっていないことをビジネスにする視点でしょうか。
そして勿論、そこには一定の需要が。



それならばいっそ、リッチになるとか投資のことには触れずに、本書のカギとなっているポジショニングに特化してくれた方が良書になったかもしれません。
その方が、起業したい人や既にしている人が、スターになるために読むべきと胸を張って言えます。

どうやらスタービジネスという良い話から枝葉を広げ過ぎた印象です。

スターベンチャーを目指して起業して、発展させる。
そのためのポジショニングの重要性を学ぶ事に集中すれば、途中から悪くはない感触を得ました。

ですが、それならばその手の本は他にもあるので、本書である必要もありません。

そのような訳で総合★★★(3.7)の評価をしました。

ただ、ポジショニングという概念そのものはとてもとても大切です。私自身も事業の中で痛感してきました。
自分をどこに置くかで、成否が決まると言っても過言ではありません。
周りを見渡しても、稼ぎのある経営者ですら間違える部分です。
ブランディングにも話が通じていきます。

ここで「STARの法則」を見たい


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スタービジネスの例として、
リチャード・コッチ氏が挙げるもの。


独自のフィールドを開拓していった者達。

Google、Amazon、Ebey、Skype、マクドナルド、コカ・コーラ・・・。
マニアックな所では、ファイロファックス、シルク・ドゥ・ソレイユ、プリマス・ジン等々。

イメージが沸くでしょうか。

その他にもこういった大企業だけではなく、私達の手に届く範囲の起業家の話も出て来ます。
特にベルゴというレストランチェーンの話。
むしろ私達にはその方が嬉しく感じさせます。

それらのリアルな栄枯盛衰を語る中で登場するのが、

天国までの7ステップ。


スターベンチャーの創造に不可欠なテンプレート。

この7つのステップを完了し、すべての答えに満足できるなら、”あなたの頭の中に”、たった今、新しいスター企業が誕生したということだ。これ以上必要なことは何もない。(p112)





このテンプレートは中盤の要。
先程挙げた企業を分析し、そのステップに当てはめていく内容には説得力を感じるでしょう。
具体的には、どこに着眼し、起業し、発展させるか。

勿論、根底で大事なことはポジショニング。

リチャード氏の解説・分析は、どの書でもわかりやすく緻密なのが特徴です。
これにはいつも感服させられます。

どのスタービジネスも、STARの法則に当てはめると、例外無くそのステップを踏んでいることに気付かされていきます。
無理やりなところは見られませんし、とても理に叶っています。

個人的には、考え方そのものは規模の大小を問わず使えそうだとも。
実際に、著者も
「さあ、やってみよう!」
と言わんばかりに。



リーダーの座を死守する闘い。


スタービジネスも、その光を失う時がある。

あなたはこう思いませんか?

ニッチ市場を選ぶのもわかるけど、嗅ぎ付けて参入してくる所が増えるとどうなるのか、と。
本書は周到にスターであり続ける方法にも言及。



主に著者がかかわってきた経験からです。
その決して甘くはない闘いには、ビジネスの厳しさを教えられていくように感じさせるでしょう。
 

スターも絶対ではない。

 
生まれながらのスターでなくてもいい。スターの座は、勝ち取ることができる。ただし、スターになれるのは、それを志す者のみである。高成長企業とニッチのリーダーの重要性を理解しなければ、市場が(調子の良いときと悪いときを通じて)あなたに何を伝えようとしているのかを理解しなければ、スターへの道は開けない。

しかし、冒険心と野心を持ち、スターの考え方を理解していれば、あなたがベンチャーをスターにできる可能性は驚くほど高まる。(p107)

再び起業家の立場への発言ですが、誰でもスターになれる可能性があるという一方で、そうであり続ける執念や野心も教えてくれます。

中盤から後半は、一部を除いてほぼ起業家にとって必要な内容。
コストパフォーマンスを考えたら、投資などの話が無ければ、そういった方達に密度の濃い書籍になっていたのかもしれません。
良いフレーズが多いだけに。

独創性を持たず、他を模倣する事業は成功しない。(p100)

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ガチで独創的に読んでくれたあなたに謝謝。

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