こういう書籍はとても有難い。
まずそれが第一印象です。
どういうことなのか説明しますね。
あなたは古文を読むことに抵抗はありますか?
もしその抵抗がある一方で、名著「風姿花伝」の言わんとしていることを読んでみたい! そんな願いがどこかにあるのなら、その願いは本書で叶えられます。
ささやかに。
「ビジネス版「風姿花伝」の教え」
(Amazonのリンクに飛びます。その他は下記にて)
つまり、人によって親密度が変わってくるであろう古典であっても、現代のビジネスマン用に解釈・編集された本書が有益だということです。
ちなみに原文はこちら。
「風姿花伝・三道」
この「風姿花伝」がどのような書籍か、またはその原文のレビューはこちらに展開していますのでご参照下さい。是非是非知って頂きたい謎めいた歴史もあるのです。
今回の本記事では、重複する箇所は極力割愛しますのでご容赦頂けたらと思います。
「風姿花伝」を知らずして、ビジネス書を語るな!!!
巷ではそんな主張も叫ばれています。
その真偽を考えるのは置いておいて、それを踏まえた上でこんなところに目を向けてみませんか?
時代を越えて語り継がれる芸の本質に迫っていく内容。
それは、噛み砕けば噛み砕くほど、ビジネスに向き合う現代の私たちに欠かせない思想へと進化。
永く愛される芸への取り組み方を仕事のそれへと置き換えることが可能です。
本書はこの『風姿花伝』の教えを、ビジネス書として読み解いたものです。
原文を忠実に現代語訳するのではなく、世阿弥の教えをわかりやすく伝えられるよう、意訳しています。(p4)
淘汰されずに生き残った思想にはそれ相応の理由と価値があります。
大きな木の根が土をつかんで広がっていくように、強固で動じることの無いものです。だから本書はビジネス版と進化しても、いつでも心の支えになり、発見もあり。
何度読み込んでも飽きることがありません。
さて、本書をレビューするにあたり、まずあなたに質問をさせて下さい。
この慣用句を知っていますか?
Contents
「初心忘るべからず」。
座右の銘にしている方もいるかと思います。
この句に限らず、現代でも知られている教訓が、実は風姿花伝には多く残されています。だから知らぬ間に、半ば日本人のDNAになっていたと考えてもおかしくはありませんね。
もしかしたらあなたのDNAにも既に組み込まれているのかもしれません。
そう考えていくと、本書の序盤で日本最高峰のビジネス書と強く定義するのもうなずけます。
多くの指導者や経営者に読まれ愛される理由もまた然りですね。
一方、そんな内容とは別に、非常に大きな特徴が本書にはあるのです。それは、
著者の森澤勇司氏は能楽師。
通常の解説書には無い切り札です。
それらを否定する訳では決してないのですが、実体験として芸を磨いてきた人物だからこそ深く読み解ける内容が続きます。
技術の研鑽を競争にしてしまっては本末転倒です。技術の先にある感動をイメージし、かかわる人の心に咲く花の美しさが見えた時にこそ、技術を高める意味が浮き上がってきます。(p37)
私事にはなりますが、実は数ある解説書の中で、リサーチの末に本書を選んだ理由の一つはそのことでした。
世阿弥が伝えようとした深い真意を、同じフィールドにいて理解出来る人物ではないかと。加えて、その道のプロの言葉が知りたいと切に感じさせました。
やはりどんなジャンルであれ、プロの言葉が聞きたくはありませんか?
このビジネス版の大きな流れと内容は。
第一章から七章まで。
その内訳は幅広い分野に及んでいきます。
第一章「成長」
第二章「思い通りにならない時」
第三章「仕事の意義と結果の出し方」
第四章「勝負」
第五章「人間的魅力の作り方」
第六章「部下の育て方」
第七章「商談という舞台の極意」
これだけを見てしまうと、本屋に並んでいる自己啓発書と何ら変わらないと思うかもしれません。
元来、風姿花伝は室町時代に作られた芸の秘伝書でしたよね?
このように私たちが使う現代語のビジネス版に置き換えられていることで忘れてしまいそうですが。
冷静になって思い起こしてみると、広く解釈され、現代の文明に当てはまるように進化している本質には驚かされるばかりです。
また、現代人用にそこまで噛み砕いてくれた著者への敬愛の気持ちも生まれて来そうです。
私は原文の方も愛読していますが、本書を通して、逆輸入ならぬ逆理解して相互作用を楽しんでもいます。古典が好きでしたら、オススメしたい手段です。
こうして人生そのものにも成長と感動をもたらす格言が盛り沢山。時に戒めも込められています。
ドキッと心に矢が刺さるように。
この創業理念を忘れ、一時的には成功しているように見えながら、向かう方向が変わってしまった時、その仕事は社会にとって不必要なものになります。
より良い社会貢献ができるように志は高く持ちたいものです。(p75)
あなたにとっての矢はいくつ見つかるでしょうか?
これからも末永く座右の銘として携えていきたい教訓が並んでいます。
とてもストイックで静かな強さを感じさせるその様は、秘やかに燃えたぎる青白い炎のようです。
まさに日本人のDNAにぴったり。
あえて一言物申すならば。
私見ですが、非常に好意的に捉えている書籍です。
とは言うものの、あなたのお役に立てる情報をと考えると、気になる箇所もお伝えしないといけません。
実は2つあります。
まず一つ目は、該当する箇所の原文を載せても良かったかなという所。
本書は現代語のみで構成されています。古文は一切出て来ません。
一応、原文のどこに書いてあったのかの引用は記されています。
そこでこう感じてしまうのは私だけでしょうか。
せっかく風姿花伝を大きな題材としてピックアップしているのに何も無い。
そうなると、ただの普通の訓戒書に見えてしまう印象も残ります。
それはとても惜しく感じさせますね。
どのように現代風に意訳されていったのかも知りたいところです。せっかくの風姿花伝ですから。
個人的には原文を照らし合わせて読みたいですね。
そして二つ目は、やや抽象的な表現に頭をひねる必要のある所。
元々が芸事にまつわる指導書だからでしょうか。
加えて、著者の言葉の感性も影響を与えていると感じられます。
人は物事を大雑把にとらえがちです。因を三つセットにしてしまい、三つの果を考察したのでは、因果のつながりを知ることはできません。細分化して因と果を直線で見ていけば、必ず良い方法が見つかります。(p39)
芸術や宗教の趣です。
だから見方を変えると、噛み砕いて理解していくたびに知性の成長をも促してくれるとも取れます。
見開きで現実と向き合っていく構成。
それオンリーです。
この手のスタイルはよく見られるもので定番とも言えます。次ページにまたがることは一切無いので、頭も切り替えやすく読みやすさも感じさせます。
よくぞ字数を収めて、このようにまとめてくれたと著者に感謝です。
凝縮された解説文は無駄を感じさせません。
その中で最も重要な一文は太字で表現。これも徹底しています。
これらは単なるスペックの話かもしれません。
ですが、読者にとって読みやすくする演出そのものも、風姿花伝の影響でしょうか。
人を喜ばせる芸の道。
周りを振り回さないために、ショックを受けたとしても、自分の経年変化を素直に認める柔軟さは、矛盾しているようでありながら脳の若さを保つことになります。(p63)
良いことにも悪いことにも現実的に触れていく内容の中で、そういった演出は味方になってくれる心持ちにもさせるでしょう。
ちょっとしたオアシスのようです。
※参考記事
古文を読むことに抵抗はありますか?
再度同じ質問をすることを許して下さい。
もしあなたにまだ抵抗があったとしても、本書は現代人に優しいビジネス書です。
さらには古典のキッカケをも強く与えてくれる重要な書籍だと伝えさせて下さい。
幅広いアプローチは末永く接することが出来、私達日本人の血や肉となります。
そこで風姿花伝自体の著者である世阿弥について興味が生まれました場合はこちらも如何ですか?
「世阿弥の世界」
ビジネス書とは離れてしまいますが、芸術関連の評論です。
能そのものへの探求心がある場合には損にはならず、これだけの文献を生み出せた彼の感性の真実に触れてみるのもいいかもしれません。
個人的にはその完成やバックグラウンドに、仕事柄も手伝い、永く興味が湧き続けています。
続いてはこちらの本。
「あなたの才能をお金にかえる49の言葉」
プロ意識養成講座とも捉えられます。
風姿花伝ほどではないにせよ、書かれている教訓は核心を突いたものばかりです。
またシリーズ化されているので、似たコンセプトの関連書籍の啓発本は多数あります。
「ビジネス版「風姿花伝」の教え」
マイナビ新書
伝説の教えって、こういうことだったんだ。
最後に:
花、咲いていますか?
???
花?
私も抽象的な発言をしてしまいましたね。
とは言え、風姿花伝にはこの「花」というキーワードが頻繁に登場します。
どのような考えや思想に花が咲いていて、どのような芸の振る舞いに花が咲いているのか?
この概念は深いものです。
年齢や経験を重ねるたびに花が咲いているのかいないのか。
日常のどんな言動に花が咲いているのか。
花のある人とは?
本書を読みながら考えていました。
どんな所に咲くのかなと。
人生であれビジネスであれ、自然の摂理に抗わず、誰も傷つけず、宿命(さだめ)と付き合っていく覚悟の心に咲くのかなと。
そんな真の意識の高さを密やかに感じてみては如何でしょうか。
現代版にその姿を変えても、そんな花はいつまでも咲き続けています。
伝説の教えって、こういうことだったんだ。
「ビジネス版「風姿花伝」の教え」を見たい
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「「ビジネス版「風姿花伝」の教え」で、古典の名言からこんな本質をシンプルに受け取って下さい。」への4件のフィードバック
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